ポケモントレーナー
ポケモントレーナー
ぼんやり池を眺めていると、不意に近くの茂みがガサリと音を立てた。
僕はそちらを見た。ビッパやホルビーでもいるのかな。
がさりと音を立てて茂みから出てきたのは、11、12くらいの女の子だった。
こんな夜遅くに何をしているんだろう?モンスターボールを持ってるってことはトレーナー?
女の子は僕を見て言った。
「キバゴだ!」
意気揚々と茂みから飛び出して、女の子は腰のボールに手をかけた。
「行け!ドー君」
ボールから飛び出してきたのは一体のドードーだった。
「つつく!」
僕はまだ少しぼんやりしていたからその攻撃をまともに食らってしまった。
痛いけど、これがポケモンバトルなんだ。
それに痛いからって本当に傷付いたわけじゃないんだ。痛いだけでそれ以外は何も感じない。
「でんこうせっか!」
つつくのダメージが残ってるせいでうまく動けない。
なんとか直撃はまぬがれたけど、攻撃を受けてしまった。僕も反撃しないと。
僕は口を大きく開けてりゅうのいぶきを吐き出した。
それはドードーに命中した。
「わぁ、すごい!ドードー、もう一回つつく!」
僕はなんとかそれをよけた。
「えーい」
間の抜けた声と一緒に赤と白のボール……モンスターボールが飛んできた。
僕は一瞬赤い光に包まれてボールに入った。快適な空間に放り込まれ少し気が緩んだけど少し抵抗するだけでぱかっとボールは開いた。
本当にボールに入るにはかなりおとなしくしてないとダメなんだってお母さんが言ってた。ちょっと抵抗するだけで簡単に出れる。
「何でー?」
何でってそう簡単に捕まらないって。
もう一個ボールが飛んできた。
ので、もう一回抵抗した。
そしたら不意に女の子はしゃがんで泣き出してしまった。
「ウッ、ウウッ、ヒック……」
困るよ、僕のせいみたいじゃないか。
泣き出した主人を見て、ドードーは僕を睨み付けた。
『どーするんだよ、こうなるとお嬢はなげーんだよ』
『どーするってなにさ!知らないよ僕は』
「ヒック、ヒック……ウッ、エーン」
そんな間も女の子は泣きっぱなしだ。
『いいよ、お前早くどっか行っとけ。今はこれでもそのうち忘れるだろうから』
どっか行っとけって言われてもなあ……さっき飛び出してきたばっかだし。
『ほら、早く行けよ』
僕はちらりと女の子の方を見た。
泣き続けている女の子を見ているうちに、なぜかこの子についていこうかななんて思ってしまった。なぜかはわからないけど。
僕は女の子の方に近付いて、その顔を覗き込んだ。
「ヒック、ウッ、何で?」
不思議そうに女の子は僕の方を見た。
『おい、行けって』
ドードーはくちばしを鳴らした。でも僕は気にならなかった。
女の子は僕をひょいと抱き上げた。
「捕まえた!」
モンスターボールで捕まえられたわけじゃないけど、捕まってしまった。少し暴れれば抜け出せるけどなぜかそうする気にならなかった。
『どうするんだよ』
『ボールには入らない。でもついていこうかなって』
僕はドードーに言った。
『なに言ってるんだよ』
『いいじゃないか』
「あれ?二匹とももう仲良くなったの?」
女の子はのほほんと言った。違うからね。
「一緒に来てくれる?」
僕は頷いた。
女の子は満面の笑みを浮かべて僕を抱きしめた。
悪くないなって思うのは何でだろ。

■筆者メッセージ
久々の更新……
次回も未定ってどうなんでしょうか。
大事な話をあらかじめ書いておいてそこに持ってくっていうスタイルで書いてるんですが、持っていくのが難しいですね(´・ω・`)
アリデーハン ( 2014/03/20(木) 00:02 )