01 クロガネシティ
朝になり、ミオシティを後にしたサンは、一気にクロガネシティまで飛んでいった。
彼女は早速ジムに向かい受付でジム挑戦の手続きを済ませ、ジムトレーナーとのバトルを始めていた。
「リーフブレード!」
サンのリーフィアはジムのポケモン全員をほぼ一撃で倒していき、あっさりとジムリーダー戦にたどり着いた。
始めは驚きながら試合を眺めていた観客もだんだん口数が少なくなり、ついに誰も何も言わなくなってしまった。
中には「格が違う」「自信なくした」と言って観客席から去っていく観客もいたが、それより多くの新たな観客がこの試合のことを聞き付けてやって来ていた。
彼女はぼんやりとバトルスペースの隅にある椅子に座っていた。
しばらく待っていると一人の赤いヘルメットをかぶった青年が姿を表し、彼女の方に歩いてきた。
「僕がこのジムのジムリーダー、ヒョウタだ。楽しいバトルをしよう」
そう言ってヒョウタは右手を彼女の方に差し出した。しかし彼女はその手の意味が握手であるとわからずただ差し出された手を見るだけだ。
差し出された手を見てきょとんとしている彼女に違和感を覚えながらも、彼はその手を引っ込めた。
「いけっ、ゴローン!」
「リーフィア、いきなさい」
2匹のポケモンがにらみ合い、審判がバトルの開始を宣言した。
「ゴローン、ロックブラスト!」
「あなをほる」
リーフィアはゴローンの攻撃をかわし、サンの指示通りに動いて攻撃をしかけた。
ゴローンは特性、がんじょうでなんとか耐えたが、次のリーフィアの攻撃を避けられず倒れた。
「戻れ!ゴローン。いけっ、イワーク!」
「リーフィア、リーフブレード!」
ヒョウタのイワークはその一撃で倒れた。
「まさか鍛えたポケモンが一撃で……いけっ!ラムパルド!」
「ラムパルド、もろはのずつき!」
サンはラムパルドの攻撃が来るタイミングを伺い指示した。
「リーフブレード!」
真っ向からリーフィアとラムパルドがぶつかったが、倒れたのはラムパルドだけだった。
「まさか、こんなあっさり負けるなんて……」
ヒョウタは小さく呟いた。
リーフィアは彼女に駆け寄り頭を撫でてもらっている。
少し立ち直ったヒョウタはサンの方に近付きポケットからバッチを取り出した。
「ポケモンリーグ公認のバッチだよ。受け取ってくれ」
彼女は黙ってそれを受け取り、カバンのミオのバッチの横につけた。
「それは父さんのジムのジムバッチ……どうりで負けるはずだ」
「父さん?」
「僕の父さんはミオシティのジムリーダーのトウガンなんだ」
「ああ、あのジムリーダー……」
ヒョウタは何か納得したようにうなずいた。
「あ、これは賞金。」
「……ありがとうございます」
彼女は賞金を受け取ると、そこから振り返ることなく歩き去った。