05 こうてつ島5
彼女は炭鉱を出て、大きく息を吐いた。
(じき幹部が来るはず。目的を聞いてみるか)
『ここに近付いてきている者がいる』
ミオシティの方を見ながらルカリオが言った。
『誰?』
『……この波動はおそらくサターンだ』
『サターンは単独行動を好んでいるから一人で来てるはず』
『のようだな』
彼らはミオシティの方を見続けた。
しばらくすると、1匹のクロバットがこちらに飛んできた。サターンだろう。
彼女はカイリューを出してその背に乗り飛んだ。そしてそのクロバットの方に向けて飛んでいった。
向こうもこちらに気付いたのかカイリューの方に向かってきた。
「……サターン」
「やはりお前だったか」
「こうてつ島のポケモンを狙う理由はなに?」
サターンがその質問を身振りで制し、一度降りようと提案すると、彼女はおとなしくそれにしたがった。
小さな島には何本か木が生えていて、その下にいれば上からは見えない。彼らはそこに腰を降ろした。
「お前何でいなくなった?よりによって襲撃の日に」
「私がいなくてもあれくらいの襲撃は防げるでしょう、元に今ギンガ団は普通に活動出来ている」
そう言って彼女は持っているポケモンを全てボールから出した。
「私はいなくてもいいでしょう?」
「ボスはいずれお前の力が必要になると思ってるんだよ。今は使いどころが少なくても」
「……なら必要になっていない今なら何をしても問題ない」
「何をしても問題ないわけではないと思うが……まあずっと同じとこにいて出てみたくなったんだろ。一回戻らないか?」
「私の力が必要なのか?」
彼女がそう訊ねると、サターンは一瞬返答に詰まったが、不意にボールからポケモンを皆出した。
彼のポケモンは彼女を見ると飛びついていき、彼女は地面に倒された。
『サンがいる!』
『久しぶりだな』
「お前ら、サンを倒してどうすんだよ!」
サターンがそう言うと彼のポケモンの1匹のエルレイドが彼女を起こした。
『すまない』
『気にしなくていい』
その時、サンのサーナイトがそのエルレイドの方に寄ってきた。
『こいつに何もされていませんよね?』
サーナイトはサンに確かめるように問い掛けた。
『俺はサンを起こしただけだ!』
実はサンのサーナイトとサターンのエルレイドは同じ親から生まれた兄弟だったので、遭うとよく喧嘩する。今も言い合いが始まっていた。
「こいつらお前に会いたがってたんだよ。ジュピターとマーズのポケモンも会いたがってるぞ。それだけでは足りないのか?」
「それなら時々帰ればいいことだ。それより私は私に勝てるトレーナーと戦いたい」
「お前より強いトレーナーはいないと思うがな……何でだ?負けたいと思うトレーナーはそうそういないぞ」
「いつもバトルすれば勝ってしまう。同じことの繰り返しをしていても意味がない。いつも同じだ」
「それでジム巡りしようと思ったのか」
「同じところにいるより自分が動いた方がいい。それより……」
彼女は先ほどと同じ質問をした。なぜこうてつ島のポケモンを狙うのか、と。
「ボスの命令だ。俺には解らん」
「そう……」
「お前、もしボスに戻ってこいと命令されたらどうする気だ?」
サンは今まで一度もアカギの命令に逆らったことはなかった。命令に関して意見を言うときもあるが、いつもアカギの命令には従っていた。
「その時私が必要であるなら戻る」
「まあ、戻ってきたかったら戻ってこい。お前がそうしたいならな」
そこでサターンは一度言葉を切った。
「お前を止めるのは無理だから何も言うつもりはないが、俺としてはできるだけ早く戻ってきてほしい」
「……どちらにせよ、いつか一度は戻るつもりだ」
彼女はそうとだけ言うと、カイリュー以外のポケモンを全てボールに戻した。
「どこに行くつもりだ?」
「次のジムに向かう。バッチを集めてチャンピオンと戦うために」
「チャンピオンねぇ、俺のカンだけどお前はとっくにチャンピオンより強くなってるよ」
彼女はカイリューの背に乗りミオシティの方に飛び立った。
「ボスに目的を一度聞いてみるか。今日は動かさずにおこう」
サターンはそう呟き、こうてつ島の方に飛んでいった。