06 旅立ち
講座を終えたサンとハンサムは、トバリデパートにやって来ていた。
講座で手に入れた賞金で旅の用意をしようとしていた。
トバリデパート4階に、アウトドアの関連商品がたくさん売っている。
そこには『旅立ちセット』という寝袋、小さなテント、多目的鍋、それ用のコンロ、懐中電灯が入ったリュックが19800円で売っていたので、それを買い、数日分の食品を購入してデパートを出た。
「では、頑張れ」
ハンサムはそう言った。
「ありがとうございました。また会えるといいですね」
そう言ってサンは少し笑った。
その表情にハンサムは違和感を感じた。まるではじめて笑ったかのような、ぎこちない笑みだ。
サンのぎこちない笑みを見て、ハンサムは聞くか聞かないか迷っていた質問をサンにぶつけた。
「君は、ギンガ団のサンなのか?」
「……えっ?」
サンはハンサムの方を見て聞き返した。
「どういうことですか?」
「いや、ギンガ団にいると言われるサンという人間、とても強く、手持ちも全くわからないトレーナーだ。君は違うのだね?」
「……私はギンガ団に所属していません」
(確かに、こんな子供がギンガ団に所属しているなんてあり得ない。だがあの強さ、サンの手持ちにもサーナイトがいるという報告もある。どうするべきか)
ハンサムはあり得ないと思う気持ちと、もしかするとという思いに悩んでいた。
(仮に、もしこの子がサンであったら、どうするべきなのだろう。この子の人生を潰すということか、罪にも問えない)
「いや、気にしないでくれ。では、今度こそさようならだ」
「……さようなら」
そこで、ハンサムは一度もサンを振り返らず去っていった。
振り返っていたら、サンが、普通の施設の子供であるなら持っていないような非常に珍しく、持っている人間の少ないポケモン、カイリューに乗って飛んでいくのが見えただろう。
サンはカイリューと飛びながら、小さく呟いた。
「私は、ギンガ団に所属していない。嘘は言っていない」
そのか細い声は、誰の耳にも入らなかった。