05 トレーナー育成講座
八時、サンとハンサムはポケモンセンターのトレーナー育成講座に参加していた。
「では、今からトレーナー育成講座を始めまーす。なんと!最後にはスペシャルイベント?あるから、みんな頑張ってね!じゃっ、まず始めに組分けをするので、このくじを引いてくださーい!」
そう言われ、一列に並んでいた講座の参加者は、右側から回ってきたくじ箱から次々にくじを引いていった。
サンが引いたのは黄色の台紙に大きく2と書かれたカードだ。
「みんなくじを引いたかな?じゃあ説明するね!」
そう言って司会のお姉さんは二枚の黄色とピンクのカードを持って説明した。
「まずは、同じ数字の人とペアになってくださーい!」
そう言われ、一列に並んでいた参加者は一斉に動き始めた。サンはわけがわからないのか微動だにしない。
「黄色の2番の人ー、どこ?」
男の子の声だ、その声を聞いてサンはそちらを向いた。
「あっ、君が2番の子?よろしく」
その言葉にサンは黙って頷いた。
「はーい、じゃあペアになれた?早速その子とバトルしよう!」
お姉さんは大きなプラカードは掲げて言った。
「まずは、挨拶、こんにちは、とかこの時間ならこんばんはだね!で、お互いに挨拶したら、まずは賞金を決めるんだよ!」
賞金の決め方は単純で、話し合ってだいたいいくらか決める。あまりに高い賞金にしても、低すぎてもいけない。難しいものなのだ。
サン達のところは話がついたようだ。
「じゃあ次はお互いに何匹のポケモンを出すか決めましょー!……といっても時間の都合でお互い一匹ずつ!さあバトルしよう!」
と言われ、三つあるバトルスペースに番号ずつに別れてバトルを開始したって
サンは2番のため、2個目のバトルスペースで最初に試合をした。
相手の男の子のポケモンはポニータ、サンはグレイシアを出していた。
(タイプ相性的には不利だが、さっきのバトルの様子を見る限り……)
ハンサムが考えていると、バトルが始まった。
バトルの開始の合図を聞いてハンサムが顔をあげると、なぜかすでに勝負がついていた。
立っているのはサンのグレイシアで、負けたのは男の子のポニータのようだ。
何が起こったのか、サンのところはざわついている。司会のお姉さんも顔をひきつらせている
しまいには男の子が泣き出した。
「わぁぁん!」
サンは生きなく泣き出してしまった男の子を見て、わけが解らないという表情をしていた。
(……あの子は手加減というものを知らないのか)
ハンサムは心の中で思った。近くを通った誰かの親の声が聞こえた。
「……瞬殺だったよな」
「あれってみずのはどうよね?」
サンはポニータの苦手を一瞬でついて倒したようだ。
サンはそのあとバトルスペースから出て、ハンサムのところに戻ってきた。
「すごかったなあ」
「……そうですか?」
サンはなんでもなさそうに言った。泣いてしまった男の子はその両親と一緒に立って他の試合を見ていた。
10組しかいないので、すぐにバトルは終わった。
その間、サンは何人かの子供に話しかけられていたが、すべて適当に相づちをうっていた。
「これがトレーナー同士のバトルの基本!じゃあ最後はトレーナーカードの説明!これがあれば全国のポケモンセンターの料金が無料!ジム挑戦はこれがないとできません!大会のこれがないと参加できません!他にもいろいろ、トレーナーカードでできることは沢山!」
お姉さんは最後はそう締め括った。けれど、だれもが疑問に思っていた。
(スペシャルイベントって何?)
と。
「さてさて、あと最後!トーナメント!」
そうお姉さんが言ったとたん、お姉さんの後ろのスクリーンにトーナメント表が映し出された。
「黄色のカードの人は第1バトルスペース!ピンクのカードの人は第2バトルスペース!」
ぞろぞろと子供達が移動を始めた。
「さあて、じゃあまず番号1番対10番!行ってみよー!」
お姉さんのその宣言で、2つのバトルスペースでバトルが始まった。
トーナメントの結果は、サンの圧勝だった。
結局サンのポケモンには誰もダメージを与えることができず。司会のお姉さんは固まっていた。
「じっ、じゃあ最後!スペシャルイベント!なんと!ここトバリのジムリーダー、スモモさんが来てくれています!トーナメント優勝のサンちゃんが挑戦!サンちゃんが勝てば、リーグ公認のジムバッジが貰えます!」
司会のお姉さんはスモモにマイクを近付けて言った。
「楽しみですか?」
「もちろんです、バトルは相手が誰であろうと楽しみます!」
参加者はサンを除く全員が拍手をした。
「じゃあスモモさんは右に、サンちゃんは左に立ってください!」
言われた通りサンは左に立った。
「実はジム挑戦にはお金がかかって、一回500円!負ければ返ってきませんが、勝つと償却として5000円貰えます!でも5000円が貰えるのは一度きりだからね!ジム挑戦のルールだよっ!」
サンとスモモのところに審判の男が出てきて、使うポケモンを三匹選ぶように言った。
二人とも選び終え、審判の男が開始の合図をした。
まずサンが出したのはサーナイト、対するスモモはゴーリキーを出した。
「ゴーリキー、きあいだめ!」
「サイコキネシス」
また一撃でサンはゴーリキーを倒した。
「……ウソ」
会場にそんな声がした。
「やるね!行け、チャーレム!かみなりパンチ!」
次にスモモが繰り出したチャーレムは、サーナイトのシャドーボールであっさりとたおれた。
「……行けルカリオ!」
スモモは最後のポケモン、ルカリオを繰り出した。
「メタルクロー!」
「ムーンフォース」
ルカリオのメタルクローとサーナイトのムーンフォースがぶつかり、もうもうと上がった煙の中から、ルカリオがもう一度メタルクローを出し、サーナイトに命中した。
「おお……」
他の参加者がどよめいた。サンのポケモンにダメージを初めて与えた、と思った次の瞬間、ルカリオは倒れた。
「……何があったの?」
サンはお姉さんに尋ねられ、小さな声で答えた。
「きあいだま、命中しにくいけど、この近さなら外れない」
会場にいた全員が沈黙した。
そんな中、スモモが口を開いて言った。
「負けちゃった、でも楽しかったよ。はいこれ、リーグ公認のジムバッジ、君ならすぐに集まるかもね」
「……ありがとうございます」
サンはスモモからバッジを受け取り、それをベルトに付けた。
これでトレーナー育成講座は終了した。
サンはジムリーダーとの戦いの後も、ひっきりなしにバトルを申し込まれた。負けるとわかっていても強いトレーナーとバトルがしたいというのは誰もが思うようで、サンは全員の挑戦者に勝利し賞金が沢山手に入った。
最初のバトルで400円、トーナメントで3600円、スモモとのバトルで5000円、その後のバトルで14000円手に入れていた。合計23000円。