03 神話の真実と怒りの原因
『まずね、神話が間違ってるんだ』
『人間が勝手に書いたものだから真実とずれたところがあるんだよ』
「ずれたところ?」
その時、交互に話をするユクシー、アグノム、エムリットの三体の話についていけていないシロナの様子に気付いたサンはシロナにも声を聞かせるよう頼んだ。
『私達に語りかけてきたのはキミだったからね。ほら、聞こえる?』
「あっ、聞こえる」
『じゃあ話を続けるよ、どこが間違ってるかわかる?』
サンは神話を盲信してきたわけではないが、特に解らないところもなかったので返答に詰まった。
『じゃあさ、さっきギラティナはどんな様子だった?』
「怒っていた」
シロナが間髪入れずに答えた。
『その通り、怒ってた』
『ここに間違いのヒントがある』
「ギラティナが怒ってたことに?」
三体はうんうんとうなずきながら言った。
『ボクらが産まれた順番を言ってみて。アルセウスから』
「アルセウス、時空と歪の神、知識と意志と感情の三神、生死の神………」
『そこまででいいよ。それでね、この世のモノは全て前にあったモノの影響を受けるんだ』
『ほら、わかった?』
「……よく解らない」
三体はおかしいなぁと言って、顔を見合わせた。
『もし、キミ達が信じてる神話の通りなら、ギラティナはなぜ怒ってるのかな?』
『ギラティナ達の方が先に産まれた場合、彼らは感情を持たないはずなんだ』
そこでサンは彼らの言いたいことに気付いた。
「順番が逆?」
『そう。逆なんだ』
『だからボクらから取り出した結晶でディアルガとパルキアを操ることが出来たんだ』
『前に生まれていたものの影響には逆らえないからね』
「でも、その順番の違いが今回のことに何か関係あるの?影響うんぬんはわかったけど、それなら歳上の人が言ったことは絶対従わなければならないってことにならないの?」
シロナは三体に尋ねた。
『私達は概念だもの。あなた達も括っちゃえば人間っていう概念でしょう?おんなじ概念内のモノがどんな順番で産まれたって関係ないもの』
『ボクらはまったく同じに産まれたから少しだけお互いの影響を受けてるんだけどね』
『だから時空を変えてもあの男が無くしたがってた感情が無くなることはないんだよ』
「アカギの望んだ世界は出来ないということ?」
『世界は時空がないと成立しない。だから感情は絶対に存在する』
『それに一度産まれた概念はそう簡単に消えない。少なくともボクらより後の概念のものに消されるわけがない』
『ボクらを消せるのはアルセウスだけだよ』
「ならば、あなた達は時空と歪の概念を消すことが出来るの?」
『出来るよ。でも消さない。そんなことしたらボクらが存在する意味が無くなっちゃうから』
『それに前の概念が消滅したら後の概念はみんな存在出来なくて、みんな無くなるんだよ。前の概念があってこそ後の概念もあるんだから』
三体の神は分かりやすく説明してくれた。
「概念なのに姿があるの?」
『君たち人間と関わるには必要でしょ』
『こうして君たちと話せないじゃないか』
そう言って三体の神はけたけたと笑った。