02 やぶれた世界2
穴に入っていった後、サンの目に映ったのはとても奇妙な世界だった。
いくつもの岩が宙に浮き、水が彼女から見て上に流れ、自分がどこに立っているのかわからなった。
後ろにはやりのはしらにあったのと同じ穴が空いていて、違うのは向こう側が明るいことだけだ。
彼女はしばらくその奇妙なやぶれた世界を眺めていた。
「サン!」
不意に呼びかけられ彼女は振り向くと、そこにはシロナが立っていた。
「シロナさん、なぜ?」
「あなたこそ一人でこんな危ないところに行っちゃダメでしょう!」
その時、彼らの頭上を大きな黒い影が飛んでいった。
「……歪の神、ギラティナ」
「アカギはどこに?ギラティナに連れ去られたはずじゃ……」
『ギラティナに連れてかれた男はあっちだよ』
彼女の頭の中で声が響いた。
ユクシー、アグノム、エムリットの3体の神が彼らの前をふわふわと浮かんでいた。
『ギラティナを振り払ってあっちに落ちた』
『ギラティナは怒ってる。躍起になって落ちた男を探してる。あの男も私達も、見付かるのは時間の問題』
シロナにはこの声が聞こえていないのか突然の神の登場に目を白黒させている。
『案内して』
『その前に』
『何でギラティナが怒ってるのか説明させてよ。あの男のとこに案内するのはそれから』
『話を聞いた上であの男をどうするか決めるんだ』
3体の神はくるくると宙を舞いながら焦った様子もない。
正確なアカギの居所を知っているのは彼らだけなので、サンはしぶしぶ承諾した。
『でもここはすぐ見付かっちゃうから、ちょっと移動しよっか』
そう言って3体はふわふわと大きな浮いている岩の方に向かっていった。
追いかけようとしたが、岩まではだいぶ距離がある。
「どうしたの?」
シロナは会話が聞こえていなかったので、意味がわからず混乱していた。
「あそこの岩まで来いって言ってる」
サンはそうとだけ言って、3体が向かっていった岩に足をかけた。
「へ?」
変わった声をあげながら、サンの上半身がふわりと浮き上がり足をかけた岩に垂直に立つような格好になった。
「これは……」
『一個一個の岩で重力が違うの』
ユクシーが説明してくれた。
サンはなんとか指示された岩にたどり着いた。
シロナが岩に到着すると、三体の神は小さな岩に座るように言って話を始めた。