03 雪道
サンはかなりの速度でテンガン山の方へ進んでいた。
十時間頃にキッサキシティを出て、昼のうちにはテンガン山はもう眼前までせまってきている。
あと数十分走ればテンガン山の洞窟の入り口というところで、今まではらついていた雪が急に強くなってきた。
『行けそう?』
サンはウインディに尋ねた。
『私は平気だが……サンは大丈夫なのか?』
『掴まっているからいい。走って』
サンに向かってくる雪は強くなり、寒さも一段と増した。
体験したことのない猛烈な寒さに、サンは体を震わせて耐えた。
ウインディが心配そうにしているが、それでもサンはウインディを走らせた。
テンガン山のごつごつした岩にもたれかかりながら、サンは雪で濡れた衣服をウインディに乾かしてもらった。
ウインディに温めてもらってはいるものの、サンの体の震えはなかなかおさまらない。
衣服も乾き、体の震えも止まったので、サンは少し休憩をとってからテンガン山の洞窟に向かった。
テンガン山の洞窟には分かれ道があり、左へ行けばカンナギタウンへ、右に行けばハクタイシティに出ることができる。
入場料を払い洞窟に入ったサンは、しばらく真っ直ぐな道を進んでいった。
洞窟の目の届く範囲にサン以外の人間はいない。サンの足音だけが洞窟内を反響した。
分かれ道に差し掛かり、サンは迷うことなく右の道に進んだ。示された矢印にはハクタイシティと書かれている。
明かりがうっすら見えてきた。
人工的な光ではなく、太陽の発する自然な明かりだ。
洞窟を出ると陽は傾きかけていて、昼の日差しに夕方の橙色の光が混じり始めていた。
洞窟の出口は高台にあり、ハクタイシティが一望できる。
昔らしさを感じさせる建物に混じって近代的なビルも所々に建っている。
街の外れの方には森が広がっていて、先は見えない。
この高台にはサン以外にも観光客やカップルがそれぞれ景色を楽しんでいた。
サンはそれを一瞥すると、ハクタイシティに向かって歩き始めた。
ジムの受付終了までそう時間は無い。