06 ギンガトバリビル3
研究室から出たサターンはポケットからインカムを取り出してそれを着けた。
「おい、聞こえてるか?」
『問題なし。侵入者はパネル付近にいるわよ』
「わかった」
サターンはパネルに乗ると、付いてきたサンも同時に乗る。
二人は一瞬で移動した。
ワープした先には誰もいない。
「おい、いないぞ」
周囲に誰もいないことを確認したサターンがマーズに伝える。
『その角を右に曲がったとこにいるわ』
指示された通り、曲がった先で二人の侵入者、ハンサムとジュンが立っていた。
「いなくなっちまったけど」
彼らに倒されたしたっぱは報告するといってどこかに行ってしまったのだ。
「先に進むには……」
「コレか?」
サターンが二人に近付き、手にもったカードキーをひらひら振った。
「サターン……ってサン!なぜ?」
「悪いがこれ以上侵入を許すわけにはいかないんでね。力ずくでも出てってもらおうか」
サターンは好戦的な笑みを浮かべて彼らに告げた。
「湖の三神は?」
「あんたらには関係ねーよ。どうせここで負ける」
「サン!君はこんなことを望んでいるのか?」
「……こんなこと?」
サンは理解できないとでも言いたげに尋ね返した。
「湖の三神を捕まえてまですることに意味があるのか?」
「……知らない。私はただ、侵入者を倒すだけ。私の役目はいつも侵入者を倒すこと。今回もそうするつもり」
勝てるはずがない。ハンサムとジュンにはすぐにわかった。
サンはサターンにインカムを借りるて、マーズに頼んだ。
「いつも私がトレーニングする部屋にパネルを接続変更して」
『はっ?何言ってんの?あそこは……』
「こっち」
マーズの言葉を待たずにサンはインカムをサターンに返し、二人を先程のワープパネルに来るよう言った。
『ちょっと、どうすんのよ?』
「俺にあいつが止めれると思うか?接続を変更してくれ。それにサンの方が早いだろ」
『……いいけど、知らないわよ』
マーズは何かぶつぶつ言いながら接続を変更するためにキーを叩いた。
罠かと警戒しつつも、ハンサムとジュンはサンの後についてワープパネルに乗った。
サターンも最後に続く。
到着した先はギンガ団幹部が使っているトレーニングスペース。
サンは黙ってボールを取り出すと、ジュンとハンサムの方を真っ直ぐ見た。
「目的は何?」
機械のように感情のない声でサンは二人に尋ねた。
「湖の三神の解放だ」
ハンサムが答えた。
「それだけ?」
「そしてサン、君を連れ戻しに」
「私を?私はここに戻ってきた。なぜ連れ戻す必要がある?」
「君は本当にここにいていいと思ってるのか?」
「……わけがわからない。侵入者は倒す。それが私の役目」
そう言ってサンはルカリオとカイリューを出した。
何を言っても聞かないと悟ったハンサムは負けるのを承知でドグロックを、ジュンはゴウカザルを出してサンと向き合った。
サターンは壁にもたれ掛かってそのようすを見ている。
『モニターで見てるけどさ、いいの?あんな話させて』
不安げな声でマーズはサターンに聞いた。
「サンは倒す気っぽいから放っとけ。あいつらごときにサンが負けるはずがないし、なにより今のサンはあいつらを侵入者としか見てねーよ」
『まあどうせ勝てないからいいけど、そっちの方が早いし』
マーズは納得したように先ほどいじったワープパネルの接続をもとに戻し、ついでに他に誰も来ないよう、バトルスペースのパネルには二重のロックをかけた。
『じゃああとは頼んだわよ』
そう言ってマーズは一方的に通信を切り、コントロールルームにいた団員を追い出す。
「あの子供は……」
「いい?何事もなくいたいなら黙ってなさい」
マーズは恐ろしいほど冷たい目線で団員を睨み、恐怖にかられた団員は一目散に部屋を出る。
マーズはパスワードを入力してバトルスペースの様子をモニターに映し出すと、椅子に深く腰かけたままモニターをじっと見つめた。