03 ギンガトバリビル
寝ていろと言われたので。サンは自分の部屋に戻ってベッドに入った。
出ていって二週間も経っていないのに、部屋のベッドが久しぶりに感じた。
サンのポケモンは荷物と一緒にマーズが持っているので。今頃マーズに何か食べ物をもらっているだろう。
サンがうとうととし始めた時、不意に部屋のドアが開いた。
部屋は暗くされているため、誰が入ってきたのかはわからない。
サンは黙ってドアの方を見つめた。
「……起きていたのか」
なんの感情も込められていない無機質な声、ギンガ団総帥のアカギだった。
「何の用?」
喉が痛い上に寝ているので声が上手く出せない。
少し擦れた声でサンは問う。
「……風邪か?」
「知らない」
本人は知らないと言っているが、風邪だろう。そう判断してアカギは出ていこうとした。確かめに来ただけで、それ以外は特に何も用はなかった。
「……世界は広かった。私が考えていたよりも」
出ていこうと後ろを向きかけたアカギの動きが止まる。
「それがどうした」
「なぜアカギは私に外を見せなかった?」
「外には下らない感情が溢れている。今も昔もそれは変わらない。それをお前に見せるべきではないと思っていた。それだけのことだ」
「ならばなぜ私が外に出るのを止めなかった?見せるべきではないのなら止めればいいのに」
「見せても問題ないと判断した。仕事があるから戻る。お前は寝て早く治せ」
何かを言おうとしたサンを無視すると、アカギはそのまま部屋を出ていった。
サンは寝転がったままぼんやり宙を見て、ふと湖の三神のことを思い出した。
(彼らを捕らえてアカギは何をするつもりなんだろうか。新たな世界に必要なものを作るのか?)
ジュピターの話では、他の湖でも同様に神を捕らえたらしい。神を捕らえてまで何をするつもりなのか、サンにはわからなかった。
アカギが新たな世界を求めているのは知っていた。
どうやって産み出すつもりなのか、何が必要なのかもわからない。アカギの考えに従うだけだと考えていた。今のサンがあるのはアカギのおかげだ。だからできるだけの手伝いをしよう。
彼女がアカギに従う理由はそれだけだった。