02 ハクタイビル
「なにやってんのよあんたは!」
戻ってきたサンを見るなり、ジュピターは言った。
サンはなぜ怒鳴られるのかわからず、不思議そうにジュピターを見た。
「熱あるんだから大人しくしてればいいの。移動の準備も整ったんだから、行くよ」
マーズはサンの荷物を持って立ち上がった。
サンもマーズに促されて立ち上がる。
サン、マーズ、サターンの三人が部屋を出ようとすると、サンがジュピターに尋ねた。
「ジュピターは行かないの?」
「私はここの担当だし、今日は離れるわけにもいかないのよ」
ジュピターは誰のせいだか、という言葉を飲み込むと、机に座って仕事を始めた。
ハクタイビルの屋上には小型のヘリが停められている。見た目は普通のヘリコプターだ。
ヘリにはまずサターンがコクピットに乗り込み、後ろにマーズとサンが乗った。
後ろの二人がシートベルトを装着したのを確認すると、サターンはヘリを飛ばした。
「カイリューで飛んだ方が速い」
徐々に離れていくハクタイシティを見下ろしながらサンは言った。
「あんた今の自分の体調わかって言ってるの?」
呆れたようにマーズは返した。
こんな寒い時期に、しかも風邪をひいた状態でハクタイからトバリまで飛んでいくなんて無謀すぎる。
「どれくらいに着く?」
「三十分くらい?どうだっけ?」
マーズはヘリを操縦しているサターンに尋ねた。
「それくらいだろ」
サターンの反応は素っ気ない。操縦に集中しているようだった。
「ふーん。そういえばサン、強いトレーナーいたの?」
「いない。マーズの方が強かった」
「だから言ったじゃない。あんたより強いトレーナーなんていないって」
サンは黙ってうつむいた。
沈黙が続く。
「あと数分で着く。着陸の準備しとけ」
サターンは言った。
「もう?速くない?」
沈黙に耐えきれなかったサターンは予定よりもかなり速度を上げて進んでいたのだ。
「見えてきた」
サターンに言われ、二人は前を見た。
異彩を放つ建物が見える。ギンガトバリビルだ。
サンは無関心そうに窓の外にちらりと目をやり、すぐに戻した。
ヘリはギンガトバリビルに無事着陸した。
マーズにシートベルトをはずしてもらい、サンは屋上に降りた。
そのあとに続いてマーズとサターンも屋上に降りる。
「寒いわね、中行こ」
マーズはサンの手を掴んでビルの中に入っていく。
屋上に一人残されたサターンは小さく溜め息をついて呟く。
「あいつ、ヘリの片付け忘れてやがる」
ヘリを戻しにいく必要があるのだが、一人でできる作業ではない。
サターンはちらりとヘリに目をやり、ビルの中に入っていった。