03
サンはいつも食事を摂る部屋に入った。そこではジュピターが食事を終えて片付けをしているところだった。
「あ、起きた?パンとスープだけどいい?」
「いい」
「その子達連れてるの?」
「みんなの分のご飯ある?」
サンはベルトのボールに手を掛けながら言った。
「ちょうど私のポケモン達にもあげようとしてたとこだからみんな出して」
「わかった」
そう言ってサンは彼女のポケモンをすべて出した。
元から出ていたリーフィアとグレイシアに加え、ウィンディ、サーナイト、ルカリオ、カイリューが部屋に現れた。
『あっちにジュピターの子達がいるから一緒に食べてきなさい』
『了解』
『はーい』
ぞろぞろとサンのポケモン達は部屋の端に寄っていった。
「サン、さっきボスが呼んでたから食べたら行きな」
「わかった」
サンは頷いて、出されたスープを口に運んだ。
サンは食事を全て終えて、彼女のポケモン達も食事を終えたのを確かめてからポケモン達に声をかけた。
「いくよ」
そう言ってボールにポケモン達をしまった。
サンが今いる建物はギンガ団の宿舎の四階、宿舎は四階建てで一階が食堂とバトルスペースになっていて、二、三階はしたっぱと研究員の部屋、四階が幹部の部屋と幹部専用のバトルスペースになっている。
ボス……アカギの部屋はギンガ団本部の最上階にあり団員が通称ボスの部屋と呼んでいる。たいていそこか研究室か他の町の支部に行くかしている。
サンは幹部証をかざしてワープパネルを起動させた。
このワープパネルは本部内の全てのワープパネルに繋がっている。証によって行けるパネルと行けないパネルがあり、サンは一部のみ移動出来る。
これを使うにはまず証をかざして、その人物だということを証明するために数字と記号を組み合わせた五桁のパスワードを入力する。
サンは自身のパスワードを入力して、直にボスの部屋に行くパネル番号を押して、ワープした。
「……来たか」
青い髪の男が無表情でサンを見た。無表情だが、目は鋭い。普通のしたっぱならすくみあがるような顔だ。
「何?」
サンも無表情に言い返した。
「そこに座れ」
男、アカギが指したのは普通のソファーだ。
サンは言われた通り、そこに腰を降ろした。とはいえ、サンはまだ子供なので、ソファーはサンにとって大分大きい。
「最近は何をしている?」
「最近は主に神話を読むか、ジュピター達とバトル」
「そうか」
アカギはサンをしばらく見て言った。
「今度、十三日午前七時に国際警察の強制捜査が入る。いや……あれは襲撃か。それを倒せ」
「予想される襲撃地点は?」
「侵入は正面から、いくつかの小隊に別れてくる。が、それは奴らのフェイクだ。そちらに目を向かせて裏から入る作戦だろう。あちらには研究室があるからな」
「私はどこを落とせばいい?」
「正面に二体、裏に一体、正面の二体には指示は出しておけばいいだろう。で、お前は裏のポケモンに指示を出せ、奴らの精鋭が侵入してくるのはあちら側だ、一体だと油断させて潰せ」
「わかった」
二人の間には何かぴりぴりしたものが流れている。お互いに目を逸らさない。
少しの沈黙の後、先に口を開いたのはサンだ。
「それだけか?」
「いや、一度バトルしろ。座っているばかりでは鈍る」
「わかった」
サンは立ち上がり、先程使ったワープパネルに向かった。
サンは幹部専用バトルスペースにワープした。
「あまり時間を取りたくない、やるぞ」
アカギはモンスターボールを取り出して言った。
「何体対何体?」
「三対三だ」
サンは手早く三つボールを取り出して頷いた。
そして同時にボールのボタンを押して、それぞれのポケモンを出した。
サンはルカリオ、アカギはドンカラスを出した。
「ルカリオ、はどうだん」
「エアスラッシュ」
二体の攻撃がぶつかり、消えた。
が、消えたと思ったとたん、ドンカラスの後ろから一発のはどうだんが飛んできた。
「クァ!」
ドンカラスがバランスを崩してすぐに、サンの幼い声が響いた。
「ルカリオ、しんそく」
ドンカラスは倒れた。すぐにアカギは次のポケモンを出した。
「ギャウ」
ギャラドス、だが普通の青色ではなく真っ赤ないろちがいのギャラドスだ。アカギはギャラドスに指示を出した。
「じしん」
「みきりっ」
すんでのところでルカリオは見切った。ギャラドスのじしんをそのまま食らえば大ダメージを受けるだろう。
「ルカリオ、いわなだれ」
いくつもの岩がギャラドスに降り注いだ。ギャラドスにぶつかった岩は消えていく。
「ハイドロポンプ」
「はどうだん」
ぶつかった攻撃は、ルカリオのはどうだんが勝った。たいして威力を削がれないままギャラドスに当たった。だが、効果はいまひとつ、そんなことはお互いにわかっているのですぐ次の攻撃に移った。
「しんそく」
(しんそくで裏に回れ、そこで至近距離、急所の鱗にりゅうのはどう)
サンは心の中でルカリオに指示を出しながら言った。この力のおかげでサンは複雑な指示を相手に知られることなくポケモンに出せる。
ルカリオがりゅうのはどうを当てた瞬間、ギャラドスは目を回して倒れた。
三体目に出てきたのはダイノーズだ。
「だいちのちから」
「ボーンラッシュ」
ルカリオはボーンラッシュを出す前に攻撃を受けた。それに地面技なので効果抜群だ。
「でんじほう」
ルカリオは倒された。
サンはリーフィアを出した。
「あなをほる」
「でんじふゆうで浮け」
(ほって背後に回ってリーフブレード、位置はもう少し右。そこで出なさい)
「ギィー」
ダイノーズは鉄と鉄が軋むような声をあげて倒れた。
「やはり強いな」
アカギは誰にも聞こえない声でそう呟き、ワープパネルの方に歩いて行った。
「明後日だ。明後日六時半、裏の倉庫の上に行け、マーズがお前と行動する」
「了解」
サンはそう答え、ポケモンを全て出した。
たいていここでトレーニングをするので、今から始めることにした。
明後日、敵を迎え撃つために。