01 古代の像
ハンサムが情報を受け取った頃、サンはハクタイジムの前に立っていた。日が傾きかけているので早く受け付けを済ませないと今日中に挑戦できない。
彼女はジムに入っていった。
無事受け付けを済ました彼女は例のごとくジムトレーナーをあっさりと倒していき、ジムリーダーとの試合になった。
出てきたジムリーダーは彼女の方に歩いてきて、彼女に手を差し出した。
「ジムリーダーのナタネです。よろしくね。君のことはスズナとかスモモから聞いてるよ」
彼女は出された手を握り返し、小さく頭を下げた。
「じゃあ始めよっか!」
ナタネは試合開始を宣言した。
「頼むわよ、ハヤシガメ!」
「グレイシア!」
二人のポケモンが向かい合い、先に動いたのはナタネだった。
「ハヤシガメ、ウッドハンマー!」
「れいとうビーム!」
グレイシアの放った一撃をまともにくらってしまい、ハヤシガメは倒れた。
「うわー、君強いね」
ナタネは感心しながらハヤシガメをボールに戻した。
「行きなさい、リーフィア!」
ナタネはリーフィアを出した。
「れいとうビーム!」
「リーフブ……」
ナタネが言い切る前にグレイシアがれいとうビームを放ち、リーフィアは倒されてしまった。
「ええっ!」
ナタネは驚きながらリーフィアをボールに戻し、ロズレイドを出した。
「ヘドロばくだん!」
「ふぶき!」
ロズレイドの放ったヘドロばくだんはふぶきで固められ床に落ち、ほとんど威力の削がれなかったふぶきはロズレイドに命中した。
「ヤチェのみ……」
ロズレイドは手の花の中に隠していたヤチェのみを食べて攻撃を耐えていた。
倒したと油断していたグレイシアはそのあとに放たれたヘドロばくだんを避けきることができずダメージを受けた。
「油断していた。グレイシア、れいとうビーム!」
ロズレイドはひらりとそれをかわすと、もう一度ヘドロばくだんを放った。
グレイシアはそれをかわしたが、少しかすってしまった。
その時、グレイシアのようすが少し変わった。苦しそうにしている。
どうやらどく状態になってしまったようだ。
「どうやらどく状態になってしまったようね」
ナタネは言った。
「ふぶき!」
サンはナタネの言葉に返事せず、攻撃を放った。
どく状態になって油断していたロズレイドはあっさりと倒された。
「どく状態にしたからって勝てるわけじゃない」
そう言ってサンはグレイシアの方に駆け寄ると、カバンから出したモモンのみをグレイシアに食べさせた。
「あーあ、負けちゃった。はいこれジムバッチ」
そう言ってナタネはサンにバッチを渡した。
「どく状態にしたから勝てるってことじゃないもんね。教えられたよ」
「バトルに絶対はありませんから」
「子供のくせにずいぶん大人っぽいこと言うのね。で、ジムバッチこれで全部なの?」
ナタネは彼女がカバンにバッチを付けるのを見て言った。
「そうです」
「じゃあ次はポケモンリーグ?1か月後に開かれるけど」
そこで彼女は一瞬表情を曇らせたが、ナタネはそれに気付かずに続けた。
「1か月の間どうするの?特訓とか?」
「……考えていません」
彼女はそうとだけ言うと、ナタネに頭を下げてそのままジムを後にした。
彼女はジムを出ると、ポケットに手を入れ、1枚の紙を取り出した。
エイチ湖でジュピターのから受け取った紙だ。
『ハクタイジムのバッジを手に入れたら、その日の午後7時、ハクタイシティの東の林にある古代の像に来なさい』
綺麗な字でそう書かれていた。
彼女が時計を見ると、時刻は6時15分。
彼女は紙を手に、ハクタイシティの東に向かって歩き出した。