04 強いトレーナー
ジュンとサンは並んで雪道を歩いていた。
ポケモンはジムで回復してもらったので元気になっている。
先程のジム戦で負けたというのに、ジュンの表情はジム戦の前よりも明るく見える。サンにはそれが不思議でならなかった。
「なぜ負けたのにそんな表情なの?」
サンはジュンに尋ねていた。
「なんでって、これから特訓するからだよ」
「特訓?」
「負けたんだから今回こそ勝てるようにトレーニングだ!」
ジュンとその横にいるゴウカザルが同時にうなずいた。
「負けたらトレーニングをするの?」
「そりゃあそうだろ。戦略とかを練り直さないと」
ジュンは怪訝そうな顔をした。
「そう……負けたらトレーニングをするのか」
サンの反応を不思議に思いつつ、ジュンは言った。
「なあ、こおりタイプのポケモン持ってないか?トレーニングするの付き合ってくれよ」
「グレイシアならいますが、いいんですか?」
ジュンは嬉しそうにうなずいた。
「ああ、ありがとな」
サンとジュンは少しキッサキシティから離れたところに行って、バトルができそうなところを探した。
サンはグレイシアを、ジュンはゴウカザルを出して向かい合った。
「ゴウカザル、かえんほうしゃ!」
「みずのはどう」
力の差は歴然だった。
グレイシアのみずのはどうはゴウカザルのかえんほうしゃをあっさりと打ち消し、威力はほとんどそのまま、ゴウカザルにみずのはどうが浴びせられた。
一瞬で決まった勝負に、ジュンはぽかんと口を開いて固まった。
「ウソだろ」
ジュンの驚く顔を見ても眉ひとつ動かさず、サンは立っている。
「行けっ、ヘラクロス!」
ジュンはゴウカザルを戻してヘラクロスを繰り出した。
「ヘラクロス、からてチョップだ!」
「れいとうビーム」
攻撃を当てようとグレイシアのほうに向かってくるヘラクロスに、それは正面からぶつかった。
ヘラクロスの動きが一瞬止まり、その隙に指示もなくグレイシアが動いた。
「ふぶき」
グレイシアはヘラクロスの真正面まで近寄ると、一気にふぶきを吐いた。
至近距離で当てられたふぶきに、耐えきれずヘラクロスは倒される。
ジュンはヘラクロスを戻して、そのまましばらくぼんやりしていた。
「どうかした?」
動きを止めたジュンにサンは尋ねた。
「いや、すげー強いんだなって思ってさ」
「……本気だった?」
ジュンは真っ直ぐジュンを見て言った。
「本気だったに決まってんだろ!何でそう思うんだよ?」
ジュンは少しむっとしたようだ。
「私は本気を知らない。今までのバトルが本気でやってきたものなのか、そうでないのかも」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味。私は誰か私に本気というものを教えてくれるトレーナーを探している。私より強いトレーナーを」
それだけ言うと、サンは一人でキッサキシティの方にまで歩いていってしまった。
ジュンはわけがわからないという表情でその後ろ姿を見送った。