03 ジュンvsスズナ
サンとジュンの二人はキッサキジムに向かった。
特にすることもなかったサンは、ジュンのジム戦を観戦することにした。
ジュンは四人目のジムトレーナーを順調に倒していき、最後の一人のジムトレーナー戦となった。
相手はイノムー、ジュンはゴウカザルを出した。
先に動いたのはジュンだ。
「ゴウカザル、マッハパンチだっ!」
素早い動きで動いたゴウカザルはイノムーにパンチを浴びせようとした。
「れいとうビーム!」
イノムーの目の前にいたゴウカザルは効果いまひとつとはいえ、間近で放たれたれいとうビームの勢いに攻撃を放つ前にバランスを崩した。
「今だっ!イノムー、どろばくだん!」
「まずい、かえんほうしゃ!」
両者の攻撃はちょうど真ん中でぶつかり、バランスのとれていない状態で吐かれたかえんほうしゃは押し負ける。
ゴウカザルは威力が削がれたどろばくだんを食らい、倒れはしなかったがダメージは大きかったようだ。
「もう一発かえんほうしゃだっ!」
なんとかして早く体勢を立て直したゴウカザルはイノムーにかえんほうしゃを浴びせた。
「インファイト!」
かえんほうしゃに紛れてかくとうタイプ最高火力技、インファイトがイノムーに命中した。
イノムーはゆっくりと倒れ、観客席からは拍手と歓声が起こる。
サンはぼんやりとそのバトルの様子を眺めていた。
これが白熱したバトルというものなのだろうか。
サンはこんなバトルのできるジュンが羨ましかった。
サンのバトルはすぐに終わってしまう。そう望んだわけでもないのに、ただ自然とポケモンに指示を出すために口が開き、頭にイメージが浮かぶ。
結果はいつも同じ、いつもサンの圧倒的勝利で終わり、戦い終えても何も得ない。
ゴウカザルは次のポケモンに倒されてしまったものの、五人目のトレーナーを倒したジュンの表情は満足げで、サンがバトル後に得ることのない何かを得ているようだった。
ジュンのポケモンが回復したところでキッサキシティのジムリーダー、スズナが現れた。
スズナはニコニコ笑いながらジュンと握手を交わし、お互い離れると向き合ってポケモンを出した。
ジュンはゴウカザル、スズナはグレイシアだった。
「グレイシア、ふぶき!」
「かえんほうしゃだっ!」
ふぶきで悪くなった視界により、かえんほうしゃの狙いは定まらず、かえんほうしゃは空を切った。
「マッハパンチ!」
さっとゴウカザルが動き、その攻撃は命中する。少しふらっとしたグレイシアだったが、すぐに真っ直ぐ立ち、スズナの指示で至近距離からみずのはどうを放った。
ゴウカザルはそれをかわそうとするも、至近距離からだったので避けきることができなかった。
「まずい!かえんほうしゃ!」
攻撃をなんとか耐えたゴウカザルは同じく至近距離からグレイシアにかえんほうしゃを浴びせる。
それを耐えきれなかったグレイシアは倒れ、ご苦労様の声と共に、スズナのモンスターボールに吸い込まれていった。
「行けっ、マニューラ!」
繰り出されたマニューラは出てきてすぐ動いた。
不意を突かれたゴウカザルは攻撃する間もなく倒れる。
ゴウカザルはなんとか立ち上がった。
「マッハパンチ!」
ゴウカザルの最後の力を振り絞ったマッハパンチと、マニューラの爪がぶつかった。
ゴウカザルはふらりと倒れ、効果抜群の技を食らったマニューラは倒れそうになったのをなんとか持ちこたえた。
「戻れ、ゴウカザル」
ジュンはゴウカザルをボールに戻し、一つ深呼吸をした。
「行けっ、ヘラクロス!」
「マニューラ、こおりのつぶて!」
「メガホーンだっ!」
マニューラは先程のバトルで少しふらふらしているが、無数の氷の粒をヘラクロスに浴びせた。
ヘラクロスは氷の粒の中を真っ直ぐ突出していき、その角でマニューラを思い切り突いた。
フィールドの端まで飛ばされたマニューラは目を回して倒れている。
ヘラクロスは少しダメージを受けているものの、平然としていた。
「やるねー、見直しちゃった」
スズナは感心しながらマニューラをボールに戻した。
「早く次のポケモンを出してくれよ」
ジュンは楽しくて仕方ないといった様子でスズナを急かした。
「そう急がないでよ……行けっ、ユキノオー!」
このユキノオーが彼女の切り札のようだった。
「ユキノオー、ふぶき!」
ユキノオーの周りの空気が冷えて固まり、それがジュンのヘラクロスに殺到する。
「つっぱりで応戦だっ!」
ヘラクロスがつっぱりでふぶきの中を突進していく。
その様子を見て、スズナはふっと微笑んだ。
「ユキノオー、ぜったいれいど!」
ふぶきで視界の狭まったヘラクロスは、スズナのユキノオーから発せられられたぜったいれいどを避けることができなかった。
一撃必殺の技を耐えることはできず、ヘラクロスは倒れた。
どっとジムの中は盛り上がり、ジュンとスズナの互いの手持ちポケモンは残り一体となった。
「行けっ、カビゴン!」
「ユキノオー、ウッドハンマー!」
「ヘビーボンバー!」
ジュンの指示は少し遅れたが、すんでのところで攻撃を避けたカビゴンは、ユキノオーに攻撃を仕掛けた。
攻撃を終えたところだったユキノオーにヘビーボンバーは命中し、効果抜群の技にユキノオーは大ダメージを受けふらついた。
「メガドレイン!」
スズナはすかさずユキノオーに指示を出し、カビゴンはユキノオーに体力を吸いとられる。
体力を回復したユキノオーはさらに攻撃を仕掛けた。
「パワーウイップ!」
「させるかっ!カビゴン、きりさく!」
両者の攻撃は真ん中でぶつかり、二匹は衝撃でずるっと後退した。
「もう一回、パワーウイップ!」
「ヘビーボンバー!」
スズナの指示の方がわずかに早く、それが勝負の決め手となった。
カビゴンの攻撃は命中する直前で止められ、カビゴンは倒れた。
「君とのバトル、とっても熱くて楽しかった。またバトルしようね」
スズナはユキノオーにきのみを食べさせながら言った。
「今回は負けちまったけど、次は絶対負けねーよ」
ジュンは自信たっぷりだ。
「まっ、次も負けないけどね」
「いや、次は絶対俺が勝つ」
二人は握手をしながら言い合った。