04 216番道路2
吹雪は夕方近くになってようやく止んだ。
止んだのはいいのだが、夜の雪道は危険なので、今夜は穴を出られそうになかった。
「今夜はここで野宿ね」
「……そうだね」
サンは先程まで寝ていたが、今はもう起きている。
私は近くにいたキュウコンに手を伸ばしてその毛に触れた。
ほのおタイプのポケモンなので、心地よい温かさの毛だった。
特にすることもないから、サンの方を見た。
相変わらずの無表情、何を思っているのか全くわからない。
サンはウインディの毛を撫でながらウインディと目を合わせている。口が動いていれば会話をしているのではないかという感じの目だ。
いや、実際にサンは会話をしているのだろう。
信じられないが、サンはポケモンの言葉がわかっているような発言をすることがある。
確かめようとしたこともあるが、いつも聞けずに終わっていた。
なんとなく聞いてはいけない気がしていたのだ。
ポケモンと会話ができるということを認めたくなかったのと、人智を越えているようなことを詮索するのははばかられたからだ。
たぶん今日も聞くことができないだろう。
どちらにせよ今は関係のないことだ。
これがサンのバトルの強みである気はするが、サンの力はどうあがいても手に入らない力なのだ。
翌朝、吹雪は止み、雲ひとつない冬の空が広がっていた。
朝日が昨日のうちに降り積もった新雪に反射していっそうまぶしい。
私達はさっさと朝食を済ませて穴の中をきれいにした。
ふと、昨日のマニューラ達のことが思い出され、私は穴の中にご飯を残した。
サンは私の様子を見ていたが、何も言わずに真っ直ぐキッサキシティの方角を見ている。
吹雪で足止めされたが、もう半日も歩けばキッサキシティに到着するだろう。その間にまたまた吹雪に会わなければの話だが。
その後、私達はとにかく歩いた。
一面真っ白な銀世界は美しいが、風景が全く変わらないので飽きてくる。
所々に生えた木々や、時々顔を出すポケモン達が唯一とも言える変化だ。
「あんたは何のために旅をしてるの?」
私はサンの方は見ずに尋ねた。
「私より強いトレーナーを探すため」
サンの返事は以前サターンに聞いたものと何も変わっていなかった。
「あんたより強いトレーナーなんていなかったんでしょ?」
チャンピオンが十年に一人の天才なら、サンは百年、数百年に一人の奇才だろう。
「だから探してる。きっといるはずだから」
「負けるより勝つ方がいいに決まってるじゃない」
「負けてみないとわからないこともある」
「負けねぇ……」
サンが負けている姿を見たことは一度もない。いったい最後に負けたのはいつのことなのだろう。
途切れ途切れながらも、適当な会話をしながら雪原を歩いているうちに、木々の繁っている場所に着いた。エイチ湖の近くに着いたようだ。
ここまで来ればキッサキシティまではあとわずかだ。