06 ポケモン図鑑2
夕食を食べ終えた彼らは一度外に出た。
サンはカイリューを出してナナカマドに見せた。
「ほう、良いカイリューだ」
そう言うとナナカマドはまじまじとカイリューを観察し始めた。
『なあ、いつまでこのおじさんは俺を見てるんだ?』
カイリューは少し困ったような顔でサンの方を見た。
『すぐ終わるってナナカマド博士は言ってるから少し待って。嫌だったら言って』
『嫌だよ』
すぐにカイリューは返事をした。
「ナナカマド博士、カイリューが嫌がっています」
サンはナナカマド博士に伝えた。
そんなにまじまじ見られることになれていないので、嫌がるのも当然だった。
「すまない、じゃああとは写真だけ撮らせてくれないか?」
カイリューは少し不服そうにうなずいて写真に撮られた。
彼らは長老の家に戻って話を始めた。
「君のカイリューだが、誰かにもらったのかい?」
「はい。ですがもらった時はミニリュウでした」
「そんなに早く進化したのか?」
ナナカマドは驚きを隠せないようだった。
「2年前くらいに進化しました……早いんですか?」
「うむ、そうとう早い。カイリューに進化させられないまま数十年が経過することは珍しくない。進化を研究するものとしては非常に興味深い話だ。時間は関係ないということだろうか」
ナナカマドは考え事をしているのか、ぼんやり宙を眺めていた。
そんなナナカマドにサンはふと思ったことを尋ねた。
「あのポケモン図鑑は何に使うんですか?」
「ポケモン図鑑か、あれはポケモントレーナーとして旅立つ子供たちに渡そうと思って作ったんだ。まあ全員には渡せんがな」
「相変わらず子どもがお好きなんですね」
「先のある子どもを世に送り出すのが年寄りの役目だろう」
その時、サンは小さくあくびをした。
「今日はたくさん読んでたから疲れた?」
「そうかい、風呂を沸かしてくるからちょっと待ってておくれ」
「いえ、大丈夫です。カンナギのポケモンセンターに泊まろうと思っていたので……」
「今晩はうちに泊まりなよ。私としては大歓迎」
そういっている間に、おばあさんは部屋を出ていった。
「……でも」
「いいの、こういう好意には甘えなさい」
サンはまだ納得していないようだったが、しぶしぶそれに従った。
次の日の朝、サンは日が昇る少し前に目を覚ました。
外を見ると霧が立ち込めていて、視界が悪くなっている。
サンは横で寝ているシロナを起こさないように気をつけながら外に出た。
霧が深く、前が全くといっていいほど見えない。せいぜい庭に生えている木の輪郭がぼんやり見える程度だ。吐く息もこの時期は白いが、霧に混じって見えない。
少し長老の家を出ると、昨日ははっきりと見えていた隣の家も、何も見えない。
ぼんやり霧を眺めていると、後ろから急に誰かに抱き上げられた。
彼女は暴れることもせず、ただ誰なのかだけを尋ねた。