04 読み外し
霧の晴れた212番道路は、とても歩きやすく景色も良い。
ハンサムはあっさりとロープウェイ乗り場に到着し、ロープウェイに乗り込んだ。
ハンサムがカンナギタウンに到着したのは、昼前のことだった。
遺跡と現在の生活が混在するカンナギタウンはどこか不思議な雰囲気を漂わせている。
ハンサムは本来の目的を思い出し、カンナギタウンの先テンガン山に向かった。
(サンはキッサキシティに向かっている、追い付けるか?)
ハンサムはサンが神話好きであることを知らない。カンナギタウンにまだいるとは思ってもいなかった。
適当に飲食店で昼食を済まし、ハンサムはテンガン山の方に歩いていった。
カンナギタウンから出た時、ハンサムの胸ポケットに入っているポケギアが震えた。
ハンサムはそこに表示された名前を見て顔をしかめた。が、取らないわけにはいかないので仕方なく電話に出た。
『やあ、ハンサム君』
ハンサム直属の上司からの電話だ。
「何ですか?」
『最近の君の動きに対して報告の内容が薄っぺらくてね。気になって電話したんだ』
確かにハンサムは最近報告書の内容をぼかして伝えていた。
現に今の動きも目的を明かさず単独での行動だ。不審に思われても仕方ないだろう。
『確か今君が追っているのはギンガ団だったな。新しい情報は無いのか?』
「目新しい情報は特にはありません」
ハンサムはサンについての情報を報告すべきかはだいぶ迷っていた。
報告すれば国際警察はすぐに動き出すだろう。サンと思われるのは10歳にも満たない幼い少女で、保護という名目でギンガ団に直接彼女を引き渡せと言うことも可能だ。
『ギンガ団の幹部の……サンだったか、全く解っていないのか?』
考えていたことを見透かされているようでハンサムは一瞬悪寒がしたが、偶然だろうと自分を納得させ努めて平静を装った。
「はい、まだです」
(あの子を保護してどうする?あの子を保護しているうちにギンガ団をなんとかして叩けばいいかもしれないが、あの子はどうする?)
ギンガ団との争いが終わるにせよ終わらないにせよ、サンはあらゆる権力に翻弄されるだろう。彼女を利用しようとする者はいくらでも現れる。報告してしまえばそれこそ彼女の人生はめちゃめちゃになってしまう。血眼になって彼女を探しだしその力を我が物にしようとする者が必ず現れる。
ハンサムはサンにそんな人生を歩んでほしくなかった。
せめて彼女が自分自身を守れるくらいの基盤を得るまでサンのことは隠密にしておきたかった。
『そうか、実に残念だ。君の働きは買っていたのだがね……』
「……精進します」
『何をしているのかわからんが、君なりに目的があってやっているのだろう。期待している』
そう言い残して一方的に電話は切られた。
(いずれはあの子のことが公に出るのだろうか……いや、とにかく今は追わなければ。会って話がしたい)
ハンサムはなんともいえない気分で先に進んだ。
サンがまだカンナギタウンにいると知らずに。