03 シンオウ神話
サンは奥の部屋に入り、山積みになった本の中から適当に一冊取り出して読み始めた。
〜知識の章〜
その神と目を合わせた者はその記憶を全て失い、培った知識を失う。
失った者は言葉を忘れ、何も話さなくなる。
失った者は動きを忘れ、何も出来なくなる。
失った者は知人を忘れ、認識することもない。
失った者は存在を忘れ、何も思わない。
記憶を失うということは何もかも忘れるということ。
知識の神ユクシーの目にはありとあらゆる知識が映る。
人間やポケモンの脳では受け入れることの出来ない膨大な量の知識が、ユクシーの目を通して入ってくる。脳が全てをまっさらにし受け付けようとするのだが、結局受け入れられずはち切れる。
知識を求めすぎた者への罰
〜意志の章〜
その神に触れた者は何かを成すための意志を失う。
失った者は無気力になり、なにもしなくなる。
ただそれだけ。
なにもしなくなるということは、何も起きない。
周りを見るという動きも、話すということも、なにもかもしなくなる。
たとえ傷を負おうと、死が間近に迫ろうと、なにもせずただじっと待つのみ。
生き物は意志を持って生まれ出る。
意志の神アグノムに触れるということは、生まれ持った意志を神にお返しするということ。
必要ないと突き返すこと。何もしたくないという意志の現れとして、神は意志を持ってどこかに消える。
生き物は意志があってこそ生きる。
〜感情の章〜
その神に見つめられた者はあらゆる感情を失う。
失った者は何も感じることはなく、ただ存在するのみ。
何を失っても悲しまない。
楽しくても笑わない。
何があっても怒らない。
苦しみも感じないが、喜びも感じない。
神を苦しみを忘れるために探し求めた者は、探すためにさらに大きな苦しみを得、見付けた神はたいそうお怒りになり、その者により強い苦しみの感情を与えた。
神と偶然出会った者は、面白がった神により高次の感情が与えられ、生き物本来の域を超え、生き物の次元にいられなくなる。
感情の神エムリットは己の感情のまま動く。
気まぐれではなく、その時の神の素直な感情が神の動きとなる。
知識、意志、感情、どれかが失われれば生き物は生き物でなくなる。
生き物を生き物であらせるために三神は創られ、今なお存在する。