02 長老
サンはシロナに付いてシロナの祖母の家に到着した。
「ここよ、ここがお婆ちゃんの家」
長老の家は周りの家とほとんど同じ造りをしていた。
だが、昔の家を修繕して住んでいるようで他の街とは大きく異なる街並みだ。
サンはシロナに続いて家に入った。すると1人のおばあさんがひょっこりと顔を出した。
「おや、シロナじゃないか。来るならそう言っておくれ」
「ごめんね、渡すものがあっただけだから」
その時、おばあさんはサンに気付いた。
「その子は誰だい?」
「ああ、この子はサン。神話に興味があるんだって」
「そうかいそうかい、奥の部屋にいろいろ置いてあるから読みたかったら読んでもいいよ……その子に読めるかねえ」
「この子は凄いのよ、アンノーン文字を普通に解読したり学者顔負けなの」
おばあさんは目を見開いた。
「それは凄いね、あんたの後輩かい?」
「いえ、私はただのトレーナーです。神話は趣味のようなものなので」
これはすかさずサンが否定した。
「そうなのかい、残念だねぇ。シロナがこんなに誉めるからてっきり学者志望だと思ったよ」
おばあさんは残念そうに肩を落とした。
「で?渡すものってなんだい?」
そう言われ、シロナは思い出したようにカバンをあさった。
「……シロナ、整理整頓はしっかりやりなって何度言えば解るんだい」
「出来たらこんなに苦労しないわよ」
「一回あんたの研究室覗きに行こうかねぇ」
「いいわよそんなことしなくても……あ、あった」
シロナはようやく探していたお守りを見付けてカバンから引っ張り出した。
その様子を見たおばあさんはやれやれと首を振った。
「これ」
そんな様子を気にせず、シロナはお守りを渡した。
そのお守りを見たおばあさんはそれをじっと見た。
「ああ、この模様は古代の……洞穴遺跡の模様に似てるねぇ」
「洞穴遺跡?」
「カンナギにある中で最も古いとされる遺跡で壁画で有名よ。知らなかった?」
「遺跡についてはあまり知らないので」
「ならいる間に見ていくといい。神話関係の壁画もたくさんあるよ」
おばあさんは優しくサンに言った。
「ありがとうございます。それで……あの、奥の部屋にあるという文献を読んでもいいんですか?」
「いいよ、後でお茶かなにか持っていくよ」
「そこまでしていただく必要はありません。私は文献が読めるだけで十分ですから」
そう言うとサンは一礼して奥の部屋に向かった。
その後ろ姿を見届けたシロナとその祖母は一瞬目を合わせた。
「変わった子だのぉ」
「まあ変わってるけど、悪い子じゃないと思うよ」
「そりゃあそうだ、なんたってポケモン達もあの子になついてるし」
そう言っておばあさんは息を吐いた。
「明日辺り遺跡を案内しておやりよ、どうせ研究室が嫌で出てきたんだろ」
「そっ……そんなことないわよ、お守りを渡しにきただけ」
「そうかい?てっきり散らかった研究室が嫌で来たんだと思ったよ」
「とにかく、今晩ここに泊まるから。あの子もいい?」
「泊まってくのは構わないよ」
「じゃあ久しぶりに遺跡見てくる」
シロナはそうとだけ言うと、気を落ち着かせるために外に出た。