01 ズイタウン
日が暮れる橙色の空を見て、サンは眼下に見えたズイタウンに降りた。
彼女は近くの林にテントを張って、そこで一晩を明かすことにした。
懐中電灯の明かりで照らしながら彼女はマップを見て、これからの予定を立てていた。
ズイタウンの先に進み、カンナギタウンからテンガン山を通って216番道路に出るのが一番いいルートのようだった。
だが、ズイタウンの先の210番道路はいつも濃い霧が立っており飛んで行くのには危険なので、カンナギタウンまでは歩かなくてはならないだろう。それか、谷にはロープウェイがあるので、それに乗って行くこともできる。
彼女はだいたいのカンナギタウンまでの道筋を考えるとマップをたたみ、テントに入ってそのまま寝てしまった。
ズイタウンの道路は土がむき出しで、いくつもの人間とポケモンの足跡がついている。
道をまっすぐ進むと、柵に囲まれた野原に何びきものポケモンがいた。
種族はバラバラで、ズイタウン付近には生息していないようなポケモンもたくさんいた。
全てのポケモンに共通しているのは、どのポケモンもまだ育っていないところだ。生まれたばかりではなくても、まだ動きがおぼつかないポケモンが目立った。
柵に沿ってしばらく歩くと、小さな建物が建っていて、その建物から柵の中にポケモンが出入りしていた。
看板を見ると『ポケモン育て屋』と書かれている。
彼女はしばらくそれを眺めた後、その建物の中に入っていった。
建物の中には子どもとその親がたくさんいた。
「めっちゃんはいつ戻ってくるの?」
「育ったら帰ってくるよ」
「いつ?いつめっちゃんに会えるの?」
子どもの声は震えて今にも泣き出しそうだった。
「育ててもらってからじゃないとバトルで勝てないよ」
そんな会話が聞こえてきた。
彼女はその会話を不思議そうに聞いていた。
(自分で育てないのか)
彼女のポケモンは全てアカギにもらったポケモンだが、もらった時から進化していたわけではない。
カイリューはミニリュウで、ウインディもガーディだった。サーナイトもラルトス、とにかくみんな進化していないポケモンだった。
だから彼女も始めはアカギに勝てなかったし、バトルの知識も無かった。
だからわざわざ育ててもらうということを理解できなかった。
ポケモンを育ててもらう施設なのかと、納得した彼女は興味を失い、『育て屋』から出ようとしていた。
しかし、『育て屋』の従業員らしき青年が、なにもしないで出ていく彼女のことを不思議に思ったのか、彼女に声をかけた。
「なにもしないで出ていくのかい?お母さんかお父さんはいないの?」
「はい、ここにポケモンを預けていませんし、預けるつもりもありません」
そんな彼女の言い方がカンにさわったのか、青年は声に少しイライラを滲ませながら言った。
「そうかい、じゃあな」
彼女はその青年の口調の変化に戸惑いながら、『育て屋』を出ようとした。
だが、不意に彼女が手をかけようとしたドアが勢いよく開き、彼女はバランスを崩して倒れそうになった。
「危ねーな」
青年は倒れそうになった彼女を慌てて支えてくれた。
そして乱暴にドアを開けた者達の方を向いて呟いた。
「……ギンガ団」
そこに立っていたのは5人のギンガ団のしたっぱだった。