04 変わり者
サンはぼんやりとジムに入っていくデンジを見送った。
「俺の知ってるやつは何でこうも変わり者が多いんだ?」
彼女の横に立っていたオーバは誰にともなく呟いた。
「変わり者?」
デンジの呟きを聞き取った彼女は、オーバに聞き返した。
「ああ、まあ俺とデンジは昔からナギサに一緒にいた幼なじみなんだが……変わり者だし。俺の職場の奴らも変わり者。今何してるか知らないが昔近所に住んでたやつは機械いじりばっかしてたし。君だって俺からすれば変わり者だよ」
「……そうですか」
彼女はそれからその話題に興味を失ったのか、ジムの前から歩き去ろうとした。
オーバが歩き去ろうとする彼女の手首を掴むと、彼女はオーバの方に振り向いた。
「次はどこに行くんだ?」
「キッサキシティですが……何か?」
「もうすぐ冬だ。あっちの方は雪に慣れてないときついぞ」
キッサキシティは冬が長く、夏場でも一部の雪が残っているほどの豪雪地域だ。
「そこの対策はしてから行くので平気です」
「それでも危ないだろう?」
「話がそれだけなら、私は行きますね」
そう言って彼女はカイリューを出して、その背に乗り北の方に飛んでいった。
オーバは何も言わずその姿を見送った。
飛んでいったサンの姿が見えなくなったころ、ジムの前に一人の男が肩で息をしながら走ってきた。
「あんたどうしたんだ?」
思わずオーバはその男に声をかけた。
男は顔をあげてオーバの方を見た。
「あ、国際警察のハンサム」
オーバはその男の顔に見覚えがあった。
「君か……女の子を見なかったか?」
「女の子?」
オーバはサンの姿を思い出しながら聞き返した。
「8歳か9歳くらいの髪の長い女の子なんだが……」
「さっきジムに挑戦しにきたサンって子か?」
ハンサムはうなずいた。
「あの子がどうかしたのか?確かに変わった子に見えたが……」
「少し聞きたいことがあってな」
「……キッサキシティに行くって言ってたが」
ハンサムは目を見開いた。
「この時期にか?危ないだろう」
「しっかり準備していくから平気だと言われた」
「まあ……あの子なら平気そうだが。いろいろまずいだろ」
「だってよ、来るなって感じの背中で、一人でいいって言われたみたいでさ。なあ、何者なんだ?あのサンって子。子供っぽくないし」
ハンサムは言いづらそうに口をつぐんだ。
「……ギンガ団関係なのか?あんたが今調べてるのって確かギンガ団だったよな」
「……連中の手にあの子が渡るのはまずいのは確かなことだ」
「あの強さだし、どこの組織に渡るのもまずそうだな」
「キッサキシティに向かったんだな?」
ハンサムは確かめるようにオーバに聞いた。
「ああ」
「わかった」
そう言ってハンサムは再びどこかに駆けていった。