01 ナギサの灯台
彼女はポケモンセンターを出るとすぐにカイリューを出してその背に乗った。
「東に飛びなさい」
カイリューは彼女の言葉にうなずき、地面を蹴って飛び立った。
東に向かって飛ぶと、遠くに小さな塔が見えた。
ナギサの灯台と呼ばれるシンオウ一高い灯台だ。その周りにはナギサシティの町並みが見える。
彼女はナギサシティの少し手前でカイリューから降りて海岸を歩いた。
『あといくつバッチを集めるの?』
彼女の横を一緒に歩いていたサーナイトが聞いてきた。
『ナギサとキッサキとハクタイの3つ』
『みんな集めて、チャンピオンに勝ったらどうするの?』
『チャンピオンに勝てるかなんてわからない』
『サンと私達なら勝てるよ!サンと一緒なら絶対負けない』
サーナイトは自信満々に言った。
『チャンピオンに勝てたらどうするの?ギンガ団に戻る?私はどっちでもいいんだけど』
『……ギンガ団に私が必要なら戻る』
サンはそう言って北西、ちょうどトバリシティがあるところに目を向けた。
『私は戻るべき?』
『サンの好きなようにすればいいわよ』
『私の好きなように……?』
そう言ったきりサンは黙りこんでしまった。
サンが考え事をするときはたいていこうなるので、サーナイトはそれ以降は何も言わなかった。
そのまま歩いていくと、ナギサシティのゲートが見えてきた。
ゲートに入ると、二人の青年がなにやら言い争いをしていて、少しして黄色い髪の青年がゲートから出ていった。
「あいつは、暇だからってジムの改装で停電起こすなよ」
ゲートに残された赤い髪の青年が呟いた。その青年が顔を上げると、ちょうどサンと目が合った。
「こんな子供にまで見られてたとはな。ナギサシティに何の用だ?」
「ジム挑戦です」
青年は困ったように頬を掻いた。
「ジム挑戦か……さっき出てったやつがここのジムリーダーなんだよ」
「どこに行ったんですか?」
「たぶん灯台だ」
彼女がお礼を言って立ち去ろうとすると、青年は俺も行く、と言って彼女の後に付いてきた。
「俺はオーバ、君は?」
灯台に向かう途中で青年、オーバは彼女に尋ねた。
「サン」
不意にオーバは彼女のポケモンを見た。
「強そうなポケモンだな。君きっと強いだろ」
「この子達は強いですよ」
彼女の返答を聞いてオーバは満足げに笑った。
「じゃあさ、あいつとバトルしてやってくれよ」
「……?ジム挑戦するつもりなのでバトルはしますよ」
「そういう意味で言ったわけじゃないんだが……まっ、まずはあいつを連れてこないとな」
彼女はうなずいてナギサの灯台に向かった。