05 ノモセシティ5
マキシはボールにギャラドスを戻し、サンの方へ歩いていった。
「結局一発も当てられなかったな」
笑いながらマキシは言った。
「……なぜ負けたのに笑えるんですか?」
彼女には負けたのに大きく笑い声をあげているマキシを理解できなかった。
「まっ、楽しかったってことだ。これはノモセのジムバッチ」
彼女はバッチを受け取ってそれを他のバッチと同じようにカバンに付けた。
「次こそ一発は攻撃を当てるからな」
そう言ってマキシはひんし状態のポケモンを連れて歩き去っていった。
ハンサムは少しサンの方を見たが、マキシの歩いていった方へ向かった。
その後、彼女はバトルを見ていたトレーナーに次々勝負を申し込まれ、全員を倒した。
皆、マキシの言葉に刺激されて彼女にバトルを挑んできたのだ。
さすがに疲れてきた彼女は、ポケモンセンターの2階の宿泊施設に泊まることにした。
部屋数の問題でハンサムも同室に泊まることになったが、彼女はハンサムが部屋に入ってきた頃にはすやすやと寝息を立てて寝ていた。
ハンサムは眠っている彼女の横顔を見て、今日の事を振り返っていた。
そしてふと、無いものと思っていた疑いが彼の中に再び浮上し、離れなくなっていた。
本当は彼女が長年追ってきた『サン』なのではないか、と。
(いくら『サン』という名前の人間がいたとしても、同じ名前で強く、持っているポケモンも報告と一致している)
そして今回しばらく一緒に行動したことで、彼女の行動がかなり浮世離れしていることに気付いた。本当に幼い頃からギンガ団で隠されて育てばああなるのかもしれない。しかもまだ子供だ。サターンがあれほど真剣に隠したがるのも理解できる。
(だが、なぜサンはギンガ団にいないのだろう。抜けてきたというなら追っ手がいてもおかしくない。むしろ奴らはこの子を取り返したくはないのか?)
ハンサムは彼女のカバンについているトレーナーカードを手に取り裏を見た。彼女の直筆のサインが書かれていて、それは彼が昔ギンガ団のボス、アカギと話をしたときに見た字に似ていた。
(……この字は、やはりこの子が『サン』だったのか。だが、この子を逮捕したとしてもどうすればいい?今この子は何らかの理由でギンガ団を抜け、純粋にトレーナーになりたくてこうしている。逮捕したらこの子の人生を潰すことになってしまう。己の意思でもないこと、全く知らず、意味もわかっていないこの子を逮捕し前科持ちにするのか)
ハンサムはそのまま考え続け、気付くと朝になり。サンはいなくなっていた。
ハンサムは慌てて立ち上がり、部屋を見回した。すると小さな机の上に紙が置かれているのを見つけた。
『私はこの先のナギサシティに向かいます。昨日はありがとうございました』
その文字はやはりアカギのものと似ている。
(いつ出ていったのかわからないが、サンを追いかければギンガ団の目的が解るかもしれない)
ハンサムはそれを丁寧に折り畳んで胸ポケットに入れ、部屋を出た。