04 ノモセシティ4
ポケモンセンターに到着したサン達は、それぞれの傷付いたポケモンを預けて、ポケモンセンターにある食堂へ向かった。
彼らは適当に注文を済ますと、空いている席に座って話を始めた。
「せっかく捕まえたギンガ団員をみすみす取られてしまうとは」
マキシは机を叩いた。
「私達は幹部に手も足も出なかった。サンに助けられたからよかったが」
「確かに強かった。俺達が手も足も出なかった幹部相手に挑んで追い返したんだからな」
「……君は本当にギンガ団の『サン』ではないんだな?」
彼女は顔色ひとつ変えず言った。
「はい。仮にもし私がギンガ団の『サン』なら邪魔になるようなことはしません」
「……そうだな」
(もしこの子がギンガ団の『サン』ならギンガ団の邪魔になるようなことはしないだろう)
「私がギンガ団の『サン』だったらどうしたんですか?」
そう聞き返されハンサムは返事に困った。
(この子が『サン』だったとしてもこんな子供を、罪に問えるのか?何も知らないだけなのかもしれない。それに『サン』は我々の襲撃に反撃してくるだけで、それ以外のことは聞いたことがない。どちらにせよ刑はそこまで重くならないだろう)
「君は『サン』ではないんだからわざわざ考えなくてもいいだろう」
「そうですね」
ハンサムは運ばれてきたコーヒーを飲むと、彼女を見て言った。
「時間がある時だけでいい、ギンガ団の野望を阻止するのを手伝ってくれないか?さっきのバトルを見て思った。彼らを止められるのは君しかいない」
「……考えておきます」
そう言ったきり、彼女は何も言わず、黙々とパンを食べ始めた。
ちょうど全員がそれぞれの食事を終えた頃、ポケモン達の回復が終わったというアナウンスが流れたので、彼らはポケモンを引き取った。
「そういえば君はジム挑戦しに来たんだったな」
マキシは不意にサンに話しかけると、彼女はうなずいた。
「ならポケモンセンターのバトルスペースでいいだろう」
そう言って彼らはバトルスペースに向かった。
「ジム戦の手順を踏まなくていいのか?」
「わざわざそんなことをする必要はないだろう。どうせジムトレーナーはいないだろうし」
そう言ってマキシは回復したばかりのヌオーを出した。
「それでは、マキシ対サンの試合を始める」
ハンサムは審判になって試合の開始を宣言した。
バトルスペースの周りはジムリーダーの試合が始まると聞き付け集まってきたポケモンセンターの利用者で埋め尽くされている。
そんなことは微塵も気にせず、サンはいつも通りの無表情でサーナイトを出した。
マキシはヌオーを出している。
「ヌオー、まずはどわすれ!」
「マジカルリーフ」
マキシのヌオーは守りを固めた。だが、まだ不十分なせいでサーナイトのマジカルリーフで倒れはしなかったが大ダメージを受けた。
「ねむる」
ヌオーはねむって体力を回復し、カゴのみを食べて目を覚ました。
だが、ヌオーの目が覚めたときにはすでにヌオーの目の前は大量のマジカルリーフの葉で埋め尽くされていたのでヌオーは倒された。
「行け、ナマズン!ハイドロポンプ」
「サイコキネシスで散らせ!」
お互いの攻撃は当たらず、あちこちに水が飛び散った。
「マジカルリーフ」
その攻撃をまともにくらったナマズンは一発で倒れてしまった。
観客からは感嘆の声が漏れた。
マキシはナマズンを戻し、そこで一度動きを止めた。
「どうかしたのか?」
マキシは下を向いてクククと笑った。
「どうした?」
「いや、こんなにあっさり倒されるのは久しぶりだ。だがこの状況も楽しい。一発だけでも当ててやろう、当てたいと考えるのは楽しい。一撃でも当てられたら、そう思うと例え負け試合でもわくわくする」
そう言ってマキシはボールに手をかけた。
「面白いことを言うんですね」
サンはよくわからないという顔でマキシを見たが、すぐに表情を元に戻した。
「行け!ギャラドス!」
マキシは最後の1体を出した。
「ハイドロポ……」
「十万ボルト」
マキシが指示を言い終える前にサーナイトは十万ボルトを放っていた。
攻撃の構えをとっていたギャラドスは避けることも出来ず倒れ、バトルスペースに沈黙が広がった。
「えー……サンの勝利!」
ハンサムは一時的に固まっていたものの、バトルの結果を叫んだ。
観客からは大きな歓声が上がった。
「……相変わらず容赦ねーな、あいつは」
その様子を観客に混じって見ていた男、サターンはそう呟いた。
(まああいつの本当の強さは別のところにあるが、こっちも十分すぎるくらいだな)
サターンはしばらくサンを見たが、じきにその場を去った。