01 ノモセシティ
サンとハンサムはノモセ湿原を抜けてノモセシティに到着した。
彼らが到着したのはそろそろ夕方になろうかというくらいの時間だ。
ジムに行くと、ジムの前に妙な格好をした男が立っていた。
「あそこにいるのがノモセのジムリーダー、マキシさんだ」
そう言ってハンサムはマキシの方に声をかけた。
マキシはハンサムを見ると大股で歩み寄ってきた。
「ノモセ湿原はどうなっている!?」
「沼が一つ吹き飛んでいた。国際警察の方で修復作業をしているが元通りは難しい。時間もかかるだろう」
マキシは怒りに満ちた目で湿原の方を睨んだ。
「ギンガ団めっ!よくもノモセ湿原をむちゃくちゃにしてくれたな……」
「今となってはどうしようもない。修復に専念しなければ」
「湿原をぼろぼろにして奴等は一体何を考えている?」
「解らないが……これが演習だとも考えられる。またどこかで同じような爆弾が使われる可能性もあるからな。そのときはもっと威力の高い爆弾が使われる」
「奴等の研究を止められないのか?これは法に触れることだろう」
ハンサムは渋い顔で答えた。
「ギンガ団のガードは硬い。普通の襲撃では研究室はおろか入り口で叩き出される。精鋭を送り込んでも結果は同じだった」
「なら私が行く」
「お前が行っても無駄だ。負けるぞ」
「……ギンガ団には何かあるのか?」
「幹部が他の組織とは桁外れに強い。シンオウ最強の組織といわれるだけのことはある」
ハンサムは大きくため息をついた。
「恥ずかしい話だが、我々にはギンガ団に対抗できる力はない。いつこのシンオウがギンガ団の下に入ってしまってもおかしくはないんだ」
「そんな後ろ向きでどうするんだ!」
「仕方がないだろう。幹部の力はまだ未知数。さらにその上の実力者もギンガ団にはいるらしい」
その時初めてマキシはハンサムの横にいる少女に気付いた。
「この子供は?お前の娘か?」
「私には息子しかいない」
そう言ってハンサムはある可能性に気付いた。
(この子は強い。もしかしたらギンガ団に対抗できるほどの力が……)
だが、サンのような少女を大人の争いに巻き込むのは気が引けた。こんなに幼い子供に頼らなければ我々は何も出来ないのか、とハンサムは急にむなしくなった。
だが、可能性はここにしかなかった。ハンサムは言った。
「ギンガ団と戦って、彼らの野望を食い止めてくれないか?」
彼女の表情が一瞬固まったが、ハンサムはそんなことを気にすることなく続けた。
「ギンガ団に対抗できるのは君しかいない
彼女はしばらく黙った後、小さな声で言った。
「私にはできません」
「お前何を考えている?こんな幼い子供を巻き込む気か!?」
マキシは信じられないといった表情でハンサムに向けて怒鳴った。
(……まあ当然か。こんなことを言われたら誰だって困る。いくら強いとはいえ幼い子供を巻きこもうとするなんて私にもヤキがまわったもんだ)
ハンサムはマキシに怒鳴られ自嘲ぎみに笑った。