04 テレビ4
サンは立ち上がってテレビに近付いた。
「どうしたんだい?」
彼女はテレビに手を置き、狙いを定めて叩いた。
「何してるの!?」
シロナがそう言った瞬間、1つの影がテレビから飛び出し彼らの前に姿を現した。
オレンジ色の核から二筋の電気が出ている。
「何だ?ポケモンか?」
ヒューィと小さく鳴き声をあげたポケモンはサンに近付いた。
『お前あいつに似てる。俺はロトム。あいつに貰った名前』
そのポケモンは彼女に話しかけてきた。それと同時に彼女の中に1つのイメージが浮かんだ。
一人の少年とロトムが遊んでいる。ただそれだけのイメージだったが、彼女の脳裏にそのイメージは焼き付いて離れなかった。
『あいつ?』
『俺あいつに名前貰ったのにあいつの名前忘れた。思い出せない』
彼女はロトムの言っていることはよく理解できなかった。
『でもお前あいつじゃない。俺はあいつ探してる』
ロトムはそう言って天井のシャンデリアの電球に吸い込まれるように消えていった。
「……何だったんだ?今のポケモンは」
「わかりません。ただ見たことのないポケモンであることは確かです」
ウラヤマとシロナは、ロトムが消えていったシャンデリアを見ながら言った。
「ロトム……」
彼女の呟きを聞いて振り向いたシロナは驚いた顔をして聞いてきた。
「君は……あのポケモンを知っているの?」
彼女は首を振った。
「いいえ、知りません」
「でも今名前を言ったわよね?」
「教えてくれたんです。あのポケモンが」
何を言っているんだろうとばかりにシロナは首を振った。
「さっきはテレビ、今は電球……あのポケモンは電気を介して移動するのかしら」
「電気を介して……では他の電化製品にあのポケモンは入り込んでいるのか?調べねば!」
そう言ってウラヤマは騒々しく部屋を飛び出した。
「人を探してる」
「へ?」
「あのポケモン、ロトムは誰かを探していた。だからこの屋敷を壊したりするつもりはないから調べなくてもいい」
そう言って彼女は立ち上がって客間から出ようとした。
「ちょっと待って」
シロナに呼ばれ、彼女は立ち止まって振り返った。
「君はポケモンの声が聴こえるの?」
彼女は一瞬迷ったが、小さくうなずいた。
「ウラヤマさんを手伝わないの?」
「手伝ってもロトムはなにかするつもりはないんですから私が手を出す必要はありません」
そう言って彼女はそのままもう振り返ることなく客間を出ていった。