02 テレビ2
男の姿が見えなくなると、ウラヤマはひとつため息をついた。
「誰かは知らんが、あの男が入ってきたら止めるよう使用人には言っておこう」
「私は別にそんなつもりで言ったわけではないんですが……」
「いやいや、あの男がいない方が正解かもしれん。ところでお嬢ちゃん、どこか痛いところはないかい?」
彼女は不意に話を振られ戸惑ったが、すぐに答えた。
「どこも痛くはありません。仲裁していただきありがとうございました」
「いいんだ、世の中はあんな大人ばかりだと子供達に思われても困るからね」
そう言ってウラヤマは顔をあげて屋敷の方を見た。
「そういえばどの家の子だい?親御さんのところまで送ってあげよう」
「私は旅をしているので……」
ウラヤマは驚いた顔をして聞き返した。
「ずいぶん大人びた口調で話すものだからてっきりどこかの令嬢だと思っていたが、違うんだね」
「そうだったんですか……」
「すまなかったね。そうだ!お嬢ちゃんを我が家に招待しよう」
「どういう意味ですか?」
「君があの男と口論になってしまったのは私があのような男を招いたことが原因だからね、あの男の代わりといってはなんだが家に来てほしい」
「ですが……」
彼女は早く先に行きたかったが、断るための言葉が見つからず結局ウラヤマの家に行くことになった。
屋敷に案内された彼女は、あちこちでポケモン達が戯れるウラヤマ家の庭を見てキョロキョロとせわしなく目を動かしていた。
「ポケモンがたくさんいるだろう?我が家の庭の美しさに集まってきたんだ」
そう言ってウラヤマは近くにいたコリンクを撫でようとして逃げられた。
「……おや、邪魔をしてしまったのかな?いつもはすりよってくるのに」
逃げていったコリンクはなぜかサンの方にすりよってきていたので、サンはコリンクを抱き上げた。
「お嬢ちゃんの方がいいのか」
ウラヤマは残念そうに言った。
『あのおっさん俺が楽しく遊んでる時に限って来るんだよ』
『………』
サンはウラヤマには聞こえていないコリンクの本音を聞いて複雑な気分になりながらコリンクを地面に下ろした。
サン達はひととおり庭の説明をされたあと、屋敷のなかに通された。
「ここが客間だ。くつろいでくれ」
そう言ってウラヤマは彼らにソファーをすすめた。
すすめられるまま彼らはソファーに腰掛け、しばらく黙っていた。
「ところでウラヤマさん」
不意にシロナが話を切り出した。
「なんだね?」
「私をここに呼んだ理由は何ですか?外で今行われているパーティーに招待されたわけではないようですが」
ウラヤマは一瞬紅茶を淹れる手を止め、また紅茶を淹れはじめた。
「あのパーティーは妻が主催のパーティーでね。そうだ、お嬢ちゃんはそっちに行くかい?」
サンは行かないと首を振った。
「で、要件というのは、シロナさんに少し見てほしい物があってね、最近宝物庫の掃除をしていたら出てきた物なんだが……」
「骨董品ですか?」
「いや、古い文献だ」
ウラヤマの古い文献という言葉を聴いて、一瞬サンはピクリと反応した。
「カントー産の茶葉の紅茶だ」
ウラヤマはサンの反応には気付くことなく、彼らの前に湯気の立つ紅茶を置いた。
彼女は出されたので、黙って紅茶を一口飲んだ。
「少し待っていてくれ、持ってくるから」
そう言ってウラヤマは客間から出ていった。