03 コンテスト2
サンはコンテストの受付の女性に選手がどこにいるのか訊ね、選手の控え室の場所を教えてもらい、そこに向かった。
歩いていると、先程のコンテストでマーズに負けた人が控え室の方から歩いてきた。
しかし誰の顔も悲しそうではなかった。笑って、次に向けてのことをポケモンと話していた。
普通の人が見たら彼らの表情を前向きと答えるだろう。しかし彼女は負けたのになぜ笑っているのか不思議でならなかった。
知り合いが中にいると控え室の警備の人に言って、彼女は控え室に入った。
「ダンスのコツってなんなんですか?」
「あんな演技をどうやって思い付いたんですか?」
「このリボン手作りっぽいんですけど、どうやって作ったんですか?」
控え室ではマーズが他の選手に囲まれてなにやらいろいろ質問されていた。
マーズは時々言いたくなさそうに言葉を濁しながら受け答えしていた。
そしてふと控え室の入り口に目を向けたマーズは彼女の姿を見て驚きを隠せないような表情をした。
「あんた何してるのこんなとこで!?」
マーズはそう言って勢いよく立ち上がった。
マーズが立ち上がると、マーズを取り囲んでいた選手は道を開けてマーズを通すと、彼らをちらちら見た。
マーズはサンに小声で言った。
「ここではまずいから、外行くよ」
サンは小さくうなずくと、マーズに付いて外に出た。
「サン、あんたよりによってコンテスト会場で何してたの?」
コンテスト会場の外の庭園でサンとマーズは隣り合わせにベンチに座った。
「来ないかって言われたから来ただけ。コンテストに参加する気はない」
「それはそうだろうけどさ……誰に誘われたの?」
「ミミィっていう女の子」
「審査員のミミィ?」
マーズは目を見開いた。
「どういう知り合い?」
「別に、彼女のミミロルを捕まえるのを手伝っただけ」
「そうなんだ……って今はこんな話してる場合じゃない!あんた何考えてるの?置き手紙だけ残していなくなるなんて」
「ギンガ団は私がいなくてもいなくても大差無い」
「問題大有りよ!」
マーズは叫んだ。サンはきょとんとしている。
「なぜ?襲撃は防げた。私がいなくても国際警察の襲撃くらい防げるということでしょう?」
マーズは大きくため息をついた。
(あんたの情報が外部に漏れないようにするのは大変なのよ!なのに出てって……ボスは何で月末までだけど放っとけなんて言ったのかしらね)
「とにかく、一旦戻りなさい。外はもう十分見たでしょう?」
「……チャンピオンと戦ったら一度戻る」
「別にわざわざチャンピオンと戦わなくてもいいわよ。あんたの方が強いんだから」
「マーズはチャンピオンと戦ったことがあるの?」
「無いけど、絶対あんたの方が強いわよ」
「……やってみないとわからない」
そう言うとサンは立ち上がり、コンテスト会場から出ていく人の波に向かって歩いていき、人混みの中に消えた。
マーズは何も言わずその背中を見送った。