01
いくつものモニターのぼんやりとした明かりで一人の男が浮かび上がった。
男はキーを操作し、一つのファイルを開いた。
『noimage』
本来なら写真が表示される場所に無機質な文字が並び、情報が無いことを示している。
『名前サン 性別不明 年齢不明 出身不明 所属ギンガ団(幹部) 所持しているポケモンサーナイト・ウィンディ(この他目撃情報無し) 情報不足 危険度S』
名前以外の情報がほとんど無い。全てのモニターが同じ情報を映し出した。
この男が見ているファイルは三年前に発足したここシンオウ地方の巨大組織、ギンガ団の幹部の情報だ。この幹部は情報が最も少ない。
「なぜだ?二年間でこれだけの情報しか集まらないとは……」
名前はそう珍しい名前ではない。その上男にも女にもつけられることがある名前だ。おかげで性別すら判別できない。所持しているポケモンもそう珍しいポケモンではない、それにこの幹部のポケモンであるという確証すらない。
この男がこの幹部のことをこれほど調べているのには訳がある。三年前にギンガ団が発足して以来、何度かギンガ団に部隊を送り、襲撃した。だが全てほとんど成果を上げることなく失敗した。
その理由がこの幹部だ。襲撃した部隊の何人かの報告によると、この幹部が部隊のほとんどを片付けたらしい。実際にその姿を見た者はいないが、「サン」という名前の謎の幹部はいることは確かだ。
「くそっ……」
男はほとんど何もわかっていないデータをもう一度見て、別のファイルを開いた。
こちらの情報は写真もあり、結構集まっている。
それぞれのモニターに五人の情報が現れた。
『名前アカギ 性別男 年齢二十代後半 出身ナギサシティ 所属ギンガ団(ボス)・宇宙エネルギー開発社(社長) 所持しているポケモンドンカラス・クロバット・マニューラ・ダイノーズ(この他目撃情報無し) 危険度S』
『名前サターン 性別男 年齢十代〜二十代 出身不明 所属ギンガ団(幹部 人事)・宇宙エネルギー開発社(人事部部長)所持しているポケモンドグロック・エルレイド・ブーバーン・クロバット(この他目撃情報無し)危険度A』
『名前ジュピター 性別女 年齢二十代 出身不明 所属ギンガ団(幹部)・宇宙エネルギー開発社(ハクタイ支部長) 所持しているポケモンスカタンク・ムクホーク・キュウコン(この他目撃情報無し)危険度A』
『名前マーズ 性別女 年齢十代〜二十代 出身不明 所属ギンガ団(幹部)・宇宙エネルギー開発社(管理課主任) 所持しているポケモンドータクン・ブニャット・トロピウス・エレキブル(この他目撃情報無し)危険度A』
『名前プルート 性別男 年齢五十代 出身カンナギシティ 所属ギンガ団(研究室主任)・宇宙エネルギー開発社(研究室主任) 所持しているポケモンレントラー・カイリキー(この他目撃情報無し)危険度B』
これらの情報はギンガ団に送り込んだ諜報員からのものだ。隠し撮りだが、何枚か写真がある。
「宇宙エネルギー開発社」という会社はギンガ団が経営している会社だ。ギンガ団の資金源はここだ。ここシンオウでは有名な会社で、高い品質のものを手頃な値段で売っているためこの会社の製品を買っている人は多い。妻もこれを買っているようだ。
「サン」のことはこれだけ情報が少ないと存在を疑いたくなるが、存在だけは本当に確かなのだ。存在だけは普通の団員もほぼ全員が知っている。それにこの幹部に部隊が全滅させられたのだ。
男はもう一度「サン」のほとんど無い情報を眺めた。
(この幹部のことがわかれば何か掴めるだろうか………)
特に見ることもない情報の映ったモニターをぼんやり眺めていた時、
「ハンサムさん、新しい情報が入りました!」
男……ハンサムは振り返って声の主に返事をした。
「わかった、今行く」
ハンサムは開いていたファイルを全て閉じて、その部屋を後にした。