一小節目 『音』を聞かせて
「ん・・・あ?」
俺は、どうしちまったんだ?
目を開けると、見えたのは暗闇ではなく、木で支えられた土の天井。
ドアに、窓に・・・。周りを見回すと、ごく普通の部屋だとわかった。
そういえば噂で聞いたプクリンのギルドもこんなかんじだ。
(どこだ・・・? ここ。)
いや、それよりも。
「俺、だれだったか・・・?」
記憶がない。
・・・記憶がない、だと?
(・・・それやばくね。)
起き上がった拍子に、なにか堅い物が手にあたった。
「笛・・・?」
「あーっ!まだおきちゃだめですよ!」
突然聞こえた謎の声。
驚いて振り向くと、体がなんか変な音を立てた。やばい。
我慢していることもあれなので、言葉に甘えてまくらに倒れ込む。
「あ、私、レイムっていいます。」
そいつはムウマだった。
紫色だし、ふわふわ浮いているし、俺の知っている限りではムウマだ。
レイムは、寝ててください、と口をとがらせると、ベットの横の椅子に座った。
「ムウマって飛んでる物ではないのか?」
「疲れるんです。」
・・・現実的な性格らしい。
「それはともかく、あなた倒れていたんですよ。森で。まったく、なんであの森に一匹で行ったんですか!」
「あの森・・・? キケンなのか?」
「知らないんですか!?」
それからレイムは(長々しく)説明をしてくれた。
あの森には化け物が住んでいる。
あるときはヒトカゲ、あるときはゼニガメ。またあるときはフシギダネというふうに、姿を変える恐ろしい化け物。
だれもそれの真の姿をみたことはない。
それはとても凶暴で、見つけた者をとらえ、食らってしまうらしい。
かなり要約したものの一部分。
「だから、あなたが生きて見つかったことは奇跡なんです。私に感謝してくださいねっ!」
「お、おう・・・。」
俺はかなり自己主張の強い子に拾われたらしい・・・。