プロローグ
暗い、暗い、闇の中で、流れてくるのは自由な曲。
暗い曲から、明るい曲へ。
低い音から、高い音へ。
長く、短く、音を奏でる。
一匹のピカチュウは、銀色の横笛を静かに下ろした。
曲が終わったのだ。
「これがアド・リビトゥム。」
ぽつりとつぶやくと、持っていた笛を横にすっと振った。
すると、中から出てきたのは光。
赤、青、黄色。
もちろん白も、実に美しい光だった。
「おやおや、気づいていたのか、×××。」
「隠れるとは、俺に後ろめたいことでもあるのか?」
出てきたのは、アブソルだった。
「後ろめたいことだなんて。そんなのないさ。・・・それより仕事だ。行け。」
その言葉に、×××と呼ばれたピカチュウは、ゆっくりとため息をつき、光をのこして消えた。
〜☆〜
ピカチュウは走った。
闇の中を、森の闇の中を。
時折笛を振り上げ、光をまき散らすが、抵抗むなしく光は消えていく。
(っ! なんで・・・!)
大きな岩が飛んできて、ピカチュウは慌てて飛び退いた。
(ああ―世界が真っ暗だ。)
ピカチュウはそれきり意識をうしなった。