第五話
衝撃は、想像していたよりも弱かった。グランを守るように周りに張られた“光の壁”が威力を弱めたのだ。これが張れるポケモンは限られる。
「“サイコウェーブ”!!」
紫のような、不思議な色をした波がグランを避けてゴースたちにぶつかっていく。おそらく牽制であろうそれは、充分に役目を果たしていた。
「サラ!」
グランの目の前が不自然に歪み、そこから1匹のラルトスが
吐き出される。ふるふると頭を振ったラルトスーーサラはグランを認めて笑った。
「グラン。」
怪我は?と問う声に首を振って答える。もろに喰らっていたら危険だったろうたくさんのシャドーボールはロクな衝撃をグランにもたらさなかった。
軽く目を閉じ、意識を集中させる。相手はゴーストタイプーー相性は最悪ーーだ。しかし、だからといって引くわけにはいかない。自分はエースなのだから。
「“みやぶる”」
父の言葉を思い出す。『ゴーストタイプは核を狙え。』核がどこにあるのかは個体差があるが、それを見極めなければ足手纏いだった。波動を波のように伸ばし、核の位置を“みやぶる”。ふっ、とグランが目を開いた。ゴースたちを牽制していたサラが振り返り、笑う。
「“みやぶる”は成功したみたいね。」
「援護ーー」
頼む。そう言い捨てて敵陣へと飛び込んだ。ちかい位置にいるものから“電光石火”と“はっけい”で仕留めていく。仕留め残しの事は考えなくてよかった。
「“念力”!」
はっけいを受けて吹き飛んだゴースが、“念力”でからめとられる。縛り上げられているかのような力を加えられているのがわかった。サーラの角が紅に煌めく。そのまま壁に叩き付けられて気を失うゴース。
だが、いかんせん数が多過ぎる。このままだと消耗戦に陥るのは目に見えていたし、消耗戦で勝てる見込みは薄かった。
ーー一撃で終わりにしないとあとがめんどうだ
「サラ、やるぞ!」
なにをという説明はなくても意は伝わっていた。サーラのまわりの空間がゆがむ。“サイコウェーブ”の発射用意に入ったのだ。
サーラにばかり任せておくわけにはいかない。掲げられたグランの手のひらに空気が渦巻く。渦巻き、力を貯め。その力が、臨界点を超えたと同時に解き放った。
「“真空波”!!」
吹き荒れた強風にほぼガスのゴースたちが抗えるはずもなく。なすすべもなく空中に吹き上げられる。一瞬のことに動きが止まったゴースたちを狙うのは、サーラの“サイコウェーブ” 。
「“サイコウェーブ”!!」
一瞬みえた赤い瞳と角が怪しく輝く。エスパーの力で歪められた空間が元に戻る衝撃が紫色の大波となってゴースたちに襲いかかった。
「やべ、こっちくる!?“見切り”!」
グランを巻き込まんとする紫の波は“見切り”で凌ぐ。波が引いた時、そこに立っているのはグランとサーラだけだった。