序章 万事請負い処 蒼空
第四話
依頼主の宝物を奪ったというヘルガーを捕獲するために『死の湖沼』へと乗り込んだ蒼空若手一行は現在進行形で修羅場っていた。

「うわあっ!こっち来んな!」

グランめがけて発射された“シャドーボール”を飛び上がって躱す。沼に足を取られないように気を配りながら着地して、眼前にあふれ返る紫色に舌打ちした

「何が『お前達にとって相性がいいだろう ?』だ
よ!」

どう考えても相性最悪だろ!?と忌々しそうに叫んだグランの周りにいるのは――ゴースの群れ。四方八方から放たれる“シャドーボール”を必死で躱し、しのいでいく。

さて、なぜこんなことになったのか。それを話すには少し前に遡る必要があった。

「ここが、『死の湖沼』か。」

依頼を遂行するために『死の湖沼』へとやってきたグランたちはそのおどろおどろしい雰囲気に早くも呑まれかけていた。

「禍々しいな……」

「お化けとかいそうだよな!」

「ふえっ!?」

フレイがあっけらんかんと言い放った一言でフィルが涙目になる。それを見て慌てるフレイ。通常運転であった。

「どんなに変なものがいそうでも、行くしかない
でしょう?」

「サラの言う通りだ。俺達は蒼空のメンバーなん
だからな!」

やるぞ!というグランの掛け声におー!という返答があり。少しやる気を取り戻したグラン達は『死の湖沼』へと踏み込む。さて、ここで二つ誤算があった。

一つは、入ってすぐに『ワープの種』が落ちていたこと。もう一つはフレイがーーどうしようもないレベルのーー大バカだったということだ。

それに気付いたのはフィルだった。フレイの口がモゴモゴと動いている。まるで何か食べているように。

「フレイ、何食べてーー!?」

消えた。フィルは悲鳴を上げた。フィルの近くで探索していたグランは酷いダメージを受けた。サーラはあらかじめ耳を塞いでいたらしくダメージはなかった。

さて、ここからは阿鼻叫喚である。フィルは泣きながらフレイを探そうとしてワープの罠を踏んで飛ばされるわ、サラも驚いてワープの罠に駆け寄ったと思ったら転んでやっぱり飛ばされるわ。気付くと残ったのはグランのみ。更に通路を介して大量のゴースが姿を表しー

ーー今に至る、というわけである。

ゴースたちの猛攻を凌ぎながらグランは胸中で呟いた。あの馬鹿蜥蜴、絶対後で一発殴る。

ずぼっ。

「やばっ……!?」

グランの右足が不自然に沈む。沼にはまってしまったのだ。常に周りを警戒していた視線が右足に落ち、数秒の隙が生まれる。そこを見逃すゴース達ではなかった。

ゴース達の放った“シャドーボール”がグランに迫る。目を見開くグラン。ーーやられる!

動けないグランを、‘なにか’が包んだ。


■筆者メッセージ
主に(全部)フレイのせい
言葉 ( 2016/07/31(日) 20:37 )