第三話
「グラン、フレイ、フィル、サーラ。お前たち、この依頼行くか。」
食事中。蒼空の大黒柱グレイの鶴の一声に動きが止まったのはくだんの四人。蒼空の若きエースことリオルのグランに、ヒトカゲのフレイ。チルットのフィルにラルトスのサーラ。
「いふぁひふぇふは!!!!!」
「何言ってるかわかんねえよ!?飲み込んでから喋れ!」
グランのつっこみに飲み込もうとして詰まらせてむせている。せわしない。ため息をついたラルトス、サーラの角が光り、ひとりでに水の入ったコップが浮き上がった。ふよふよと浮遊したコップをつかみ、一息で飲み干すグレイ。
「……ぷっはぁ!さんきゅ、助かった!」
「はぁ……もう少し落ち着けないんですか?」
「ほら見ろ、フィアが涙目になってる。」
涙目でぷるぷる震えているチルットーーフィルにフレイが慌てる。いつものことながら騒がしかった。
「うわっフィル?泣くなって!」
「ふえぇ……」
結局フィルを宥めて話を聞くムードになったのは夕食が終わったあとだった。
「それで、依頼って?」
「依頼人が大切にしていたスカーフを奪って死の湖沼に逃げ込んだヘルガーの捕獲と、そのスカーフの奪取だ」
「死の湖沼!?」
また涙目になるフィル。それを見てフレイが慌てる。またひと悶着あるか……と、グレイがため息をついたその時
「フィル、大丈夫だから。」
たった一言。そのグランが放った一言にフィルが涙を拭った。軽くぱたぱたと羽ばたきながらフィルが問う
「さ、最奥部、ですか?」
涙声は隠せていないが、泣いてはいない。成長なのだろうか。ひとり感嘆しつつ、顔には出さずに頷いた。
「恐らくな。ヘルガーはお前達にとって相性がいいだろう?ボコボコにしてこい。」
……アッコレコトワレナイワー。
行くか、と疑問形のクセにその意は『いけ』という命令形である。‘蒼空若手’と称される4人はその言葉に否が応でも行かされる気配を察知した。
「了解。タコ殴りにしてくるな」
「黒焦げにしてやる!」
「微力ですが、頑張ってきますね。」
「フィルも、がんばる……!」
思い思いの返答で是、という意志を伝えるメンバーにグレイの口角がわかりづらく上がる。おそらく笑ったのだろう。
「今日はもう遅いからな。明日行ってくるといい。……お前達の健闘を祈る。」
「「「「応!」」」」