chapter1 最初のスリーステップ
引っ越しはのんびりと


暖かな日差しの中、一台の荷車がコロコロとのんびり進む。
ここはワイワイタウン。水の大陸内で最大の町であり、この大陸の玄関となっている。町には様々な施設があり、他の大陸にも名を馳せている『ポケモン調査団』の本部もここにある。
朝の匂いが漂うなか、様々な種類のポケモンが一日の準備を始めていた。
そんな、町特有の空気に包まれ、荷車は一軒の見るからに新築の家の前に止まる。
「おーい、ナル。着いたぞー」
荷車を引いていたゴーリキーが荷台を覗きこむ。そこには、荷物と荷物の間にスッポリと収まり、スヤスヤと寝息をたてるポケモンがいた。ナエトルと言う種族だ。
ゴーリキーに呼ばれたナエトル ─ナルは、くあ、と欠伸をして立ち上がる。それから、眠たげに目を擦ると辺りを見渡しながらのろのろと荷台から降りた。
「あれ? もう着いた?」
「ああ、そうだ。 お前が寝ている間にな。取り敢えず荷物運び込むぞ。」
「あ、はーい。ごくろーさまでーす!」
やっと目が覚めたのか、ナルはあくまでものんびりと返す。寝起きだからではない。これが素なのだ。甲羅の上に荷物を器用に乗せ、トコトコとゴーリキーの後を追う。荷物は全部で十もなかった。それらが全て運び込まれるのにたいした時間もかからず、数分後には荷台は綺麗さっぱり荷物がなくなっていた。
「じゃあな。ゴーリキー運送店をご利用いただきありがとな。」
「はーい。ありがとごさいましたー!」
再び荷車を引き、去っていくゴーリキーにナルは手を振ると、自分の住まいに目を向ける。他の家に比べれば一回り小さいがナルはこの家が気に入っていた。それから、これからの予定についてあれこれ考える。そしてふと、側の植え込みに目を向けた瞬間。


─植え込みを乗り越え、ポケモンが現れた。
「ふあ?」
あまりにも急な出来事に頭の回転が追い付かない。そのポケモンはオニゴーリに勝るとも劣らない形相で一言を放つ。
「どけっ!!」
「え、あ、うと、わわわわ」
狼狽えつつも退こうとするナルを、ポケモンは半ば押し退ける形で地面に降り立つ。それとほぼ同時に。
「待て!タチ!!」
植え込みの先端部分がスッパリと切れた。切られた枝が宙を舞い二匹の前に落ちる。
「このっ!!」
ポケモンは、腹に付いた貝のような武器『ホタチ』を構え横一閃に薙ぐ。ここでやっとナルはポケモンの種族がミジュマルであることに気がついた。出した技は恐らくシェルブレードだ。
ミジュマルが出したシェルブレードを避け、また新たにポケモンが目の前に舞い降りる。コマタナと呼ばれるポケモンだ。
「ちっ!」
「え、え、えええええ?!」
ミジュマルが逃げ出し、ナルもそれにつられて走り出す。それを見たコマタナが追いかける。しかも、声的にまだいるらしい。泣きたい。
「なんで僕までぇぇぇぇぇええええ?!」
「知るかぁぁぁぁぁああああ!!」
朝の町に二匹の悲鳴が響いた。




■筆者メッセージ
『書くことに困ったから取り敢えず裏話でも載せてみる。』
主人公二匹の選び方。
タチ&ナルはあみだくじ。
琅珎 -amber- ( 2016/03/11(金) 15:11 )