おまけエピソード3
ドリトレの期間で六日程空白でした。これはその時のお話。
「ディーザさん!」
「何だよ、しつこいな!」
場所はギルドの庭、空では月が綺麗に光っていた。
「すっかり懐かれちゃったね」
ほぼ一方的だか、じゃれ合う二人を見てリンはクスっと笑う。
「冗談はやめてくれよ、疲れてるんだから」
ディーザが誰もいない方を向いて呟く。
「あっしも、一緒にトレーニングさせて下さい!」
「そんなのムーナに頼めよ!」
「ドリトレはギルドの人でも認められないとやらしてもらえないんですよ〜!」
「そんなの俺は知らねぇー! いいから離れろー!」
ドッコラーはディーザの足にしがみついている。ちなみに、さっきからしばらくこの状態。
「いいじゃない、一緒に練習ぐらい。わたしは疲れたから寝まーす。どうぞ二人で楽しんでね〜」
リンはニコニコ顏で中へ戻っていく。
「うえぇ!? ちょっとリン!?」
「じゃあディーザさん、やりましょう!」
「お前なー!!」
「あっしの名前は、ドコスケです!」
「そんなこと聞いてないし!」
………………………………………
「じゃあ…、やるぞ…」
「はい!」
「"ひのこ"!」
合図を取って、ディーザが"ひのこ"を吹く。あれからしばらくして、二人は練習試合での練習を始めていた。
「見切ってやる…」
ドコスケは"ひのこ"を命中する寸前で躱す。
「"みきり"か、やるな」
ドコスケがへへっとにやける。
「でも、"みきり"は連続では使えない。"ひのこ"!」
「そんなこと! 見切って…うっ!」
ドコスケに"ひのこ"が命中する。
「"ひっかく"だ!」
ディーザの爪がガリっとドコスケに命中して傷を付ける。
「なんか手応えないな…」
「"ビルドアップ"ですよ、ディーザさん」
よく見ると、ドコスケの筋肉が少し肥大化していた。
「やられっぱなしでは終わりませんよ」
ドコスケは角材を構える。
「"めざましビンタ"!」
「ぐぶっ!」
硬い角材がディーザの左頬を直撃し、地面に倒れる。
「強いじゃんか…。何でこれで認めてもらえないんだよ…」
ドコスケが一瞬黙った。
「あっしは、その…、本番に弱いタイプっていうか…、遠征に連れていってもらった時に大失敗しちゃって…」
それを聞いたディーザは、失敗した内容の質問をすることはなかった。
「なるほどな…。再開しようか」
「はい!」
その後、二人はある程度の体力を消耗するまで練習バトルをした。
そして、ドリトレの開始から五日目の夜。
「いくぞ!」
(ガシン!)
ディーザが手に力を込めて技を使うと、金属が物に擦れて出る音が響いた。
「ディーザさん、出来ましたね!」
「よし、完成だな。"メタルクロー"だ」
ディーザは練習の末、"ひっかく"を"メタルクロー"へ成長させた。
「きっかけはドリトレだったけど、完成したのはドコスケのおかげだよ。ありがとう」
「そんなことないですよ。あっしもなんか自信がついてきました。今度また遠征があるので、ムーナさんに参加させてもらえるように頼んでみます」
「そっか、頑張れよ!」
「はい! じゃあもう少しやりましょう!」
「お前元気だな…。まぁいいけど」
次の日の夜は流石に疲れが溜まり、休みを取った。
そして、七日目のドリトレを終えたディーザとリンはドコスケの部屋にいた。
「ぶがべた(つかれた)…」
「んん(うん)…」
ドリトレで疲労した二人は床にうつ伏せていた。
「お二人ともお疲れ様です」
ドコスケが部屋に戻ってきたのでディーザが起き上がる。
「ドコスケお疲れ〜」
「今日のドリトレは凄かったみたいですね」
「そういえばなんだけど、ドリトレ中の音だけど、外に聞こえてないの?」
「聞こえないですよ」
「へぇ〜、音もなし、損壊もなし、怪我もなしで凄いよな〜」
「ドリトレですから」
ドコスケは自慢げに言う。
「お前の特技じゃないだろ?」
「いいじゃないですか。あっそうだ。ムーナさんが、近い内にギルドで遠征に出るから、ディーザさん達を泊めておけなくなっちゃうなーって言ってました」
「そうなの? まぁでも一週間もただで泊めてもらってるしな」
ディーザがリンの腕をツンツンと突つく。
「リン、どうする?」
「あひたでいいんばない(明日でいいんじゃない)?」
「そういうことだから」
「わかりました。ちょっとさみしいですけど、よく考えたらお二人は旅の途中ですもんね」
「あぁ。それじゃあ、そろそろご飯食べに行こうか」
ディーザは再びリンを突ついて起こし、食堂へ向かった。
その後、ご飯を食べ、睡眠をとり、そして朝起きてお別れを言い、二人はギルドを出発した…