バクフーンに憧れたイーブイ
あるところに、バクフーンが大好きなイーブイがいました。
イーブイは、バトルではバクフーンに負けてばかりでしたが、それでもバクフーンのことが大好きでした。いえ、だからこそ、強くて格好良いバクフーンに憧れたのかもしれません。
イーブイは、バクフーンと同じ炎タイプのブースターに進化して、バクフーンみたいに強くなりたいと、そう思っていました。
そんなイーブイにある日、チャンスが訪れました。
炎の石、雷の石、水の石。イーブイの進化に必要な進化の石が、三種類全て、道端に転がっているのを発見したのです。
イーブイは駆け寄って、後先考えず、炎の石に触れようとしました。その時です。
「ブースターなんてやめときなよ。ブースターは弱いよ」
どこからか、声が聞こえました。
イーブイはキョロキョロと辺りを見回して、声の主を探しました。しかし、いっかな見つかりません。
イーブイは気を取り直して、炎の石に手を伸ばし
「やめときなってば。それよりサンダースかシャワーズがいいよ」
イーブイは、試しに雷の石に近付いてみました。すると、声はこう言います。
「サンダースか、いいね。素早く相手に雷を撃ったり、味方をサポートしたり、色々できるもの」
今度は、水の石に近付いてみます。声は今度は、嬉しそうに言いました。
「シャワーズか! シャワーズはいいよ。なんてったって素早さもあるし、持久力だってあるしね。普通に水技を撃ったりしても中々いける。シャワーズはオススメだよ」
炎の石に近付きます。
「それに引き換え、ブースターときたら。ろくな技は覚えない、ドン臭くて打たれ弱くて、バトルで見られたもんじゃない。襟巻きを増やして媚びたければブースターにすれば?」
イーブイは迷ってしまって、もう一度、雷の石、水の石の近くへ寄りました。
「サンダースはいいね。あ、でも君、めざパが竜か。シャワーズはいいよ。バトルで勝ちたければとりあえずシャワーズにしとけばいい」
イーブイは、三種類の進化の石から一旦距離を置くと、三つの石を見つめました。そして、心を決めると、その中の一つに手を伸ばしました。
進化したイーブイは、バクフーンに勝利しました。
それはそれは、呆気ないくらい簡単な勝利でした。
けれど何故でしょう、ちっとも嬉しくありません。
イーブイから進化したシャワーズは、水たまりに沈むバクフーンを見て、酷い後悔に囚われました。しかし、もう何もかもが手遅れでした。
シャワーズは涙を流そうとしました。けれど、シャワーズは全身が水の分子で出来ているので、涙は流す傍から体に吸われて、跡形もなく消えたのでした。