繁華街路地裏にて
「はぁ…」
俺はとぼとぼと繁華街の裏手にある路地裏を歩いていた。いや、徘徊していた、と形容した方が良いかもしれない。
二重三重の面接をくぐり抜け、やっと就職した会社だったが、不況に煽られ、わずか7ヶ月でクビになってしまった。
しかも、クビの理由が「暑苦しい、夏場の冷房代が馬鹿にならないから」という至極理不尽な内容である。
それはモウカザルという種族上仕方のないことであるにも関わらず、だ。
しかし、そのことを伝えにきた上司がリザードンという、これでもかと俺は会社の悪意をたっぷり受け取った。
俺はこれまで真面目に生きてきたつもりだったがどこかで間違ったことをしていたのだろうか。
いや、別段悪いことをしたわけでもなく、木登りをしていただけである。
何故俺はこんなにも不幸なのだろうか。
そんなことをもんもんと考えていると、少し先の曲がり角から「助けてくれ!」という悲痛な叫び声がした。
最近は金目当ての殺獣が増えており、ここら一帯も殺獣が多い地域として、警察にマークされている。
俺は面倒事は嫌いだが、助けてくれと言われたからには助けようとする人情と度胸と腕っぷしはある。
俺はこっそり叫び声があがった道へ歩みを進めていった。
コンクリートの塀に背を付け、気を集中させる。
腕に力をこめ「ほのおのパンチ」の構えを取る。すると、にわかに拳からめらめらと炎が上がり、拳を包んで行く。
俺は勢いを付け、道に飛び込んだ。
…と思っただけだった、
俺は逆にみぞおちにパンチを見事に決められていた。
拳の感触を味わってからのことはよく覚えていない。
体が軽く吹っ飛び誰かの声が聞こえ、俺は、意識を失った。