11話
〜1〜
「だ、誰!?」
「私は、この中央州の大統領。スミラル・ヴァンクリーフ」
だ、大統領!?
この中央州は、民政化した土地で、2年ほど前に大統領選挙があったばっかりだった。全ての決定権は国民にあると訴えて、当選したのがスミラルと言うわけだ。
「何で大統領がこんなところに?」
「国民の危機に、私だけが逃げるなど出来るわけがないでしょう。お話しは聞きました。私たちがあの空間の中にいきます」
確かに、伝説のポケモンには伝説のポケモンと言うのが良いのかもしれない。でも、俺は…。あそこに行かないといけない気がしていた。
「あの…!俺も行きます!」
「ソルト!?」
「俺は…。誰かの為に何かが出来るなら…もうこれ以上誰かを死なせたくないから…。俺は、自分から進むしかないと思うんです。危険なのは分かってます。でも、これが俺の意思だから…。俺は、もう止まるのは嫌なんです!」
子供のわがままだなんて、そんなの百も承知だ。
これが俺の意思。俺自身で決めた決意。だから…これだけは曲げるわけにはいかない!
スミラルは、しばらく悩んで俺の目を見た。そして、口を開く。
「分かりました。なら、私の背中に乗ってください」
「私も行きたい!」
「ラピス…」
「ソルトが行くなら、私も行く!お願い!私も行かせて!」
やっぱりそう来たな。でも、これだけは絶体言おうと思ってたことがある。そして、俺の考えた作戦で任せられるのはラピスだけだ。
「ラピス…。お前は来るな」
「なんで!?何で私は行っちゃダメなの!?私じゃ力不足なのは分かってる!でも!「良いから俺の話を聞け!」っ!」
「……俺は、お前が力不足だなんて思ってない。でも、お前を連れては行けないんだ。ただ…。お前にしか出来ないことを任せてもいいか?」
「…分かった。ソルトの為なら…何でもやる!」
自分の鞄の中から、技マシンを取り出す。この時の為に、お金を全て注ぎ込んだとっておきの技だ。
「これ…技マシン?何の技が入ってるの?」
「“ハードプラント”、“ブラストバーン”、“ハイドロカノン”、“ボルテッカー”」
「全部究極技じゃないか!どうしたんだよこれ!」
「残った金を全て注ぎ込んだ。あと…これはシャナに」
シャナに綺麗な石を手渡す。これもとっておきの1つ。シャナならきっと出来ると思う。
「メガストーン。メガサーナイトにメガ進化するための石。シャナならきっと使いこなせると思う」
「……分かったわ。やってみる」
「シュトゥルム。マームの“ハードプラント”を“ものまね”で覚えておいてくれないか?そうすれば…きっと上手くいく」
「任せてよリーダー」
「ソルトは?“ハイドロカノン”を覚えなくていいの?」
「俺はもう覚えてるから大丈夫だ。良いか?あのアファールを扉の前に来させてからが、本番だ。それまでに覚えておいてくれ!」
スミラルの背中に乗って。最後にラピスに言う。
「ラピス。この作戦にはお前のリーダーシップが必要になる。任せたからな!」
ラピスの返事を聞く前に、スミラルと“トルネロス”、“ボルトロス、“ランドロス”が空に飛び立つ。
一気に空間に出来た裂け目の中に入る。中には、アファールを中心に、ギランとディザン、バアルが力を注いでいるようだった。
「来たか!ディザン。バアル!」
「分かってるさ!空間の塵にしてやるよ!“亜空切断”!」
綺麗に避けて、更に距離を縮める。スミラルは動いてる姿がとても優美だった。そこにいるだけで美しいのに、更に輝きを放つ。
「“時の咆哮”!」
「“シャドーダイブ”!」
「“ハイドロカノン”!」
ディザンの“時の咆哮”を打ち消したが、ギランには避けられてしまった。
後ろの陰から、ギランが飛び出してくる。
「くっ!」
「大丈夫ですか!?」
「えぇ。なんとかまだ行けます!」
これが伝説のポケモンの実力…。遠くからみてもものすごく勢いが伝わってくるのに、近くでみたら土迫力だ。
“トルネロス”と“ボルトロス”、“ランドロス”が俺たちの為に道を切り開いてくれた。
さぁ!ここからが本番だ!