9話
〜1〜
奥の道に進むと、最上階なのだろうか。上が吹き抜けになっている広い空間にたどりついた。
そこには、大きな機械があり、その前にギランとエレスが立っていた。
「ご苦労だったな。リフォルダ中将。下がっていろ」
「はっ」
タラは、ギランの後ろに移動する。
それにしても…。近づけたくないはずなのに、どうしていまになってここにつれてきた?
「よくぞここまで来られた。さて、前置きは無しに…早速ショータイムを始めよう。さぁ…起きる時間だぞ?ディザス、バルア」
ディザスと、バルア…?誰の事だ?
ギランは目をつぶり、まるで何かを免じるかのように何かを呟く。すると、空気がビリビリするような感じが、肌に伝わってきた。
「なに…?これ?」
「大気が…震えている!?あれは…!」
青い光と紫色の光が、こちらに向かってとんでくる。
その光はギランの横で静止し、光が消えると、そこにいたのは、伝説のポケモン。時間を司る“ディアルガ”と、空間を司る“パルキア”の姿だった。
3匹の伝説のポケモンは、同時に目を開ける。
「久しいな。ギラン」
「少し、計画が遅くなったんじゃないか?いつもキッチリしているお前が珍しい」
「これでも早い方だ。貴様らこそ、悠々と眠りにつくとは、少々緩くなったな」
「なんだと!?」
「バルア!今はそれよりも計画の方が優先だ。先に進めよう」
完全に俺たちの事忘れられてるよな。それよりも、計画ってなんだ?あの3匹の話を聞く限り、大分昔から計画していたみたいだ。
もしかして、あのお方の復活があいつらの計画の本質?でも…なんだろう?まだ何かあるような。そんな感じがしてならない。
「さて…。後は動力だけだな。エステール大将。フルパワーの“雷”で電力を最大にしろ」
「宰相閣下…!この機械を動かせるだけの電力を私が出したら…。私は…死んでしまいます」
「それがどうした?」
「っ!」
冷たい声が、部屋に響いた。
もはや計画の為ならどんなポケモンであろうと切り捨てるのかよ!
「それとも…自分の命が惜しくなった…と言うことか?」
「………いいえ。計画の為ならば。この命、喜んで差し出しましょう」
なんでだ…!?なんでそこまで命をかける?
利用されているだけなのに…。どうして命を簡単に投げ出すような事をするんだ!…くそ!早く止めねぇと!
「させるか!“冷凍ビーム”!!」
「“亜空切断”!!」
「ソルト!“テレポート”!!」
バルアから放たれた“亜空切断”が向かって来るところに、シャナが助けてくれた。まるで空間を切るかのように、駆け抜けていく。
「悪いなガキんちょ。計画の邪魔をしてほしくないんだわ。そこで大人しく見ててくれな?次邪魔したら今度は…確実に殺す…!」
「っ!」
ものすごい威圧感だ…!これじゃあ、蛇に睨まれたカエルと同じじゃないか…!
その間にも、エレスは“雷”で機械に電力を与え続けている。
「こうなったら…!伝説のポケモンだろうがなんだろうが、戦ってぶちのめしてやる!!」
「えぇ!?む、無理だよ!勝てるわけないって!」
「勝てるかどうかなんて、やってみないと分からない!それに…あの“ライコウ”には生きててもらわないといけないんだ!!」
バルアとディザンに向かって一直線に突っ込んでいく。
「“シェルブレード”!!」
「ソルト!」
「あいつアホか!」
「そんなことより、さっさと撃退しろ!“時の咆哮”!」
「“亜空切断”!!」
2つの技がぶつかり合い、爆発が起こる。こんな所でやられるか!
寸前でジャンプして技を避けた。舞い上がった勢いを武器に、そのまま突っ込んで行く。
「うぉぉぉぉぉ!!!」
「そこまでだ」
黒い影が、俺をしっかりと捕らえた。空中で浮かんだ状態になり、下を見るとギランの技だと分かった。
あともう少しだったのに…!
「影…!?」
「反転世界の王である私に、影を操ることなどなんの造作ものないことだ」
「…はぁ。はぁ。終わりました」
「ご苦労。後は…あの世でゆっくりしていろ」
エレスは、ゆっくりとその場に倒れた。
そん…な。間に合わなかった…!
「さぁ…!復活の時だ!!!」
機械が起動し、紫色の光が空にかかっていた曇天に穴を開けて、空間を割いた。
そして、その空間の中にいるのは…1匹のポケモン。
「御復活おめでとうございます。アファール様」
ギランだけじゃない、ディザンもバルアも頭を下げた。
あの神秘的な光を放つポケモンは…。伝説のポケモン“アルセウス”!
真の計画が、今始まる。