5話
〜1〜
そして…レイン達はと言うと…。
操られているレインに大苦戦していた。元々強いレインが相手だ。しかも、マームは草タイプ、愛称としては最悪の展開。
「もう!レーさんストーップ!!」
「止まれないから困っているのだろう!」
クオンは相変わらず持っている水晶玉を磨いている。
かなりピカピカになってはいるが、それでも満足していないらしい。それはそれで良いのだろうか?
「ヒカミ、マーム。レインを押さえておいて!私はクオンをなんとかする」
「オッケー!シャナねぇ!“蔓の鞭”!!」
レインの足に“蔓の鞭”を絡み付かせる。マームは、抜けられないように硬く縛ったら、思いっきり引っ張った。そこに、ヒカミが馬乗りになる。
「ぐぇ!!!」
「師匠…ごめん。“つつく”!!」
身動きが取れなくなったレインのお尻に、ヒカミが“つつく”で集中攻撃をした。あれは、かなり痛い。お尻をハリセンで叩かれるのも痛いが、それぐらいに匹敵する。
「いでででででで!!!!ひ、ヒカミ!!痛い痛い!!ストップストップ!!」
「…やめたら逃げ出すでしょ?」
「な、何気にヒカミン怖い…。シャナねぇ!早くクオンを!」
マームがそう言いながら振り返ると、そこにはシャナの姿が無かった。
「あ…あれ?シャナねぇは?」
「大丈夫…。シャナなら…きっと」
「ふむ…ならば。私にもやり方と言うものがある」
「きゃっ!!」
「マーム…!」
クオンは操る対象をレインから、マームに変える。マームは、レインの足を絡めていた蔓を自分の首に巻き付け、締め上げ始めた。
「くっ…!」
「何か仕掛けるのならやってみるがよい。そのかわり、仲間が死ぬことになるぞ?」
「マーム!」
操られているせいで、いっこうに緩める気配がない。このままだと、本当に死んでしまう。
ヒカミがマームの蔓をほどこうとするが、びくともしなかった。
「ぐっ…かはっ!」
「どうしよう…。シャナ、なにやってるの…?」
キョロキョロとシャナの姿を探すが、どこにも無い。戦うにも、レインは使い物にならし、下手したらマームの命が危うい。
(何故だ…?なぜ攻撃してこない?)
クオンも流石に不思議がっているみたいだ。それもそうだろう。何かしかけてくる物だとばかり思っていたら、何の余興もないのだから。
「そろそろ、出てきたらどうだ?早く出てこないと…!」
「ぐっ…!あ…」
「シャナ…何してるの…?ねぇ、シャナ!」
「うぐっ…!」
「お願い!シャナ助けて!!!」
「大丈夫…。私を信じて…。絶対外さないから!」
バンっ!!と言う音がしたと思った途端に、バリン!と言う音が響いた。
クオンの方を見ると、綺麗に磨いていた水晶玉が割れて、バラバラに散らばる。そして、シャナがヒカミの横に着地し、マームの首をしめていた蔓もほどけて、真っ青だった顔が少しだけ楽になった顔をしている。
「わ、私の水晶玉が…!」
「貴方の様子を見させてもらいました。気になったのは2つ。1つは、攻撃を“サイコキネシス”しか使ってこない所。まぁ、“サイコキネシス”の方が策略として良いからなんですよね?と、それを言う前に、2つ目を言っておきましょうか。2つ目は、水晶玉を磨けば磨くほど、“サイコキネシス”の力が強くなる」
他の3匹は、え…?と言う顔をしている。あの騒ぎでは、無理もないか…。
「つまり、その水晶玉が貴方の力の源。それさえ壊してしまえば、こちらの勝利は確実になるって事です」
「だから、“サイコキネシス”の威力が強くなってたんだ」
「てことは…。チャンスて言うことじゃん!!」
そんなことを言っている時にも、クオンはブツブツと何かを呟いていた。何を言っているのだろう…?
「よくも…」
「え…?」
「よくも私の水晶玉を!!許さぬ!許さぬぞ貴様ら!!!地獄の底に叩きつけてくれよう!」
「それは無理だな」
落ち着きはなった声が、そう響き。クオンはゆっくりと倒れる。
その後ろには、レインの背中があった。
「なぜなら、私も未来が見えるからだ。幸せな未来が…な?」
「レーさん!もう大丈夫なの?」
「まだ少し痛むが、なんとかなるだろ。それよりも、早く先を急ごう。ソルトの事が気になる」
レインの予想も空しく、ソルトは…危機的状況の中にいた。しかし、これに気づくのはもう少し後のことである。
〜2〜
真ん中の道を走り続けるソルトは、絶対に会いたくない相手と遭遇していた。
「やっぱりあんただったのか…!エレス・エステール大将!!」
「久しいなソルト。この前会ったのは…10年前か」
俺の目の前にいるポケモンは、あの伝説のポケモンの“ライコウ”。その名は、エレス・エステール。メラニウムス帝国大将にして、俺の父さんの友人だったポケモンだ。
「その顔は…すべてを思い出した顔だな」
「あぁ。あんたの声を聞いて、はっきりと思い出したよ!あの時、俺の村を壊滅させた時の指揮を取っていたのは、あんただった!そうだな?」
「……そうだ。確かに、あの時の指揮を取っていたのは私だ」
「何で!何で父さんを裏切るような事をしたんだ!!あんたにとって、父さんはなんだったんだよ!」
しばらくの間。沈黙が続く。悩んでいるようには見えない。と言うことは、言うかどうか頭のなかで考えているようだ。
言ってほしい言葉だが、聞きたくない言葉だ。
「…ただの道具だな」
「…!クソがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ソルトは、“シェルブレード”でエレスに向かって切りつけようとする。それを、ゆうゆうとかわしながら、足で踏み潰す。
完全になすすべが無い状態になってしまった。
「…そう言えば。私と君のお父さんの出会いを話してなかったな。このような機会だ。君に話しておこう」
そういってエレスは、昔話を話し出す。
その頃ラピスたちは、着実にソルトの近くに近づいてきていた。