3話
〜1〜
さて…先に右側の道に行ったラピス達の事を話そうか。
ラピス達は、しばらく長い廊下をずーっと歩き続けた。その間には特に何があるわけでも無かったが、しばらくしてから、沢山の扉がある廊下に辿り着く。
「この以上なぐらいの扉の数は…一体?」
「さぁ…?でも、今までと雰囲気が変わったのは確かだな。気を付けろ」
ユーリのその言葉に、ラピス達は頷く。さらに先に進もうとしたときにシュトゥルムが、何かを感じ取ったのか急に止まった。
「シュトゥルム?どうしたの?」
「……誰か来る」
そして、3匹とも驚異的な雰囲気に気がついて、先の方を見る。これは…殺気!?すると、道の奥から1匹の“ヨノワール”が出てきた。殺気は、このポケモンから出ているのは、間違いなかった。
「だ、誰!?」
「う〜ん?僕はマーチャント・アツシ。暗殺ギルド、三鬼門の一人。零天のアツシ」
マーチャントは、手に持っているお菓子をバリバリと食べながら話す。お行儀が悪いよ…。
「暗殺ギルド…!?て事は…スイミルの仲間!?」
「君さぁ、失礼だよ?それ。僕をあんなクズと一緒にしないでよ」
あんなに強いスイミルを…クズって。つまり、自分の力を最強だって思ってて、しかも強いって言うのがお決まりの奴のパターンじゃん!
「サファイア、ラピス。先に行け。俺とシュトゥルムでなんとかするから。ソルトの所に早く行くんだ」
「え!?で、でも!」
「大丈夫だよ?それに、女性と子供に戦いは似合わないからね。こう言うのは男のやることさ」
「そう言うこと!さ、早く行け!」
ユーリがそう叫ぶのと同時に、ラピスとサファイアは先に進んだ。マーチャントは二人を追いかけようとはしない。どうやら、先に行かせたくないわけではないらしい。
「お前らの目的はなんなんだ!」
「僕はただ。君達を抹消しろって言われてるだけだからね。君達をさっさとやっつけて、先に行った奴らを倒せば良いだけだら」
「けっ!こちとら、だてに戦いはつみかさねてねぇよ!簡単に倒せると思ったら、大間違いだぜ!?」
「……本当にそう言うのムカツク!各の差ってやつを見せてやるよ!」
先に仕掛けてきたのはマーチャントだった。大きな手をユーリに向かい、潰そうとするが、“電光石火”で素早く避けられる。
「“ワードビジョン、雷”!!」
マーチャントに雷が直撃する。それでも、ダメージはそんなに無いように見えた。
「“ジャイロボール”!!」
体を回転させて、シュトゥルムに向かっていく。それでも、元ある運動神経で避けるが、引き返してきて、背中に直撃した。
「“雷パンチ”!!」
「“シャドーパンチ”!!」
物理攻撃の2つがぶつかり合い。ものすごい爆風と爆音。そして、黒い煙が3匹を包み込んだ。何もかも黒く塗りつぶすように。
〜2〜
そして…左側の道に行ったレイン達は…と言うと。本当にどこまでも続く、直線の廊下を走っていた。
「ねぇ、これ本当に前に進んでるの!?」
「前に走ってるから、進んでると思う…」
マームは、いつまでたっても風景がいっさい変わらない廊下にイライラしていた。
「だって、ずーっと同じ風景じゃん!どこまで続いてるのよ!」
「そうね…。こうもずっと続いてたら、気が滅入りそうになるわ」
「それでも進しかない。ソルトだって、きっとこの先に進んでるはずだ」
レインは、何気にソルトを止められなかったことを気にしていた。もうすこし早く止められていたら、こうなることも無かったかもしれない…そう考えていたのだ。
すると、水晶玉を持っている“エーフィ”がたたずんでいるのが見えた。
「誰?」
「私はクオン・アウラ。暗殺ギルド、三鬼門の一人。妖月天クオン。私には見える、貴様らの運命が…。貴様らは、私に倒される運命だ」
「あら。運命なんて、誰かに決められるような物じゃないわ。自分で作ることによって、その存在が認められるのよ?」
シャナがそう言うと、クオンはクスクスと笑い始めた。
その笑顔は妖美に包まれていて、とても美しい。それでも恐いと言う印章の方が強いかもしれない。
「運命を決めるのは私じゃない。神が決めることなのだ。それを変えることは、貴様らには不可能だ」
「なんか感じ悪ー。不可能かどうかなんて、やってみないと分かんないじゃん」
「ならば、やってみるがよい。直ぐに分かることだがな」
「そうさせてもらうよ!“リーフストーム”!!」
“リーフストーム”がクオンに向かっていく。それでも、クオンは避けようとしなかった。なぜなら、避ける必要はないのだから。
「“サイコキネシス”!!」
「うわぁ!!そんなのってありなの!?」
“サイコキネシス”で“リーフストーム”をマームに跳ね返す。つまり、何かあるごとに、“サイコキネシス”で操られてしまうと言うことだ。
「部が悪いって事か…!ヒカミ!」
「任せて、師匠…!“火の粉”!!」
「ふっ!それで、攻撃しているつもりか!?“サイコキネシス”!!」
やはり、跳ね返される。それでも、これでいいのだ。相手の視線を一気にそらして…──。
「“炎のパンチ”!!」
──一気にかたをつける!!
しかし、“炎のパンチ”はクオンの顔の前で止まってしまう。
「クッ!!」
「ふむ…。そのやり方は中々だ。しかし、私には通用しない。しばらく、仲間同士で戦うがよい」
そう言うと、レインはマームに攻撃し始めた。クオンは、キュッキュッと自分の水晶玉を磨き始めた。
「ちょ!ちょっと!!レーさん何すんの!!」
「わ、私だってやりたくてやっている訳では無いのだ!!」
レインは完全にクオンに操られている。つまり、クオンは遊んでいるのだ。それだけ余裕がある…と言うことだ。
そんなことをしている間にも…時は少しづつ進んでいること、計画が進んでいることなんか、忘れてしまっていた。