2話
〜1〜
目の前がいきなり変わったと思ったら、いきなり違う場所に移動していた。テレポートと同じ原理なのがよくわかる。
「…えっと。ここは…どこ?」
「中央州なのは確かだけどね。こうも殺風景だったら…どこかも分からないよ」
「取りあえず、外に出よう。話はそれからだ」
地上に出るための階段を上がっていく。螺旋階段見たいな石階段を上がり、外に出るための扉を開けると、とても広い空間に出てきた。
…ここは、中央州の首都。クロッメルにある大聖堂だな。
「大聖堂の中だったのか…。それよりも、早く外に出よう」
大聖堂の大きな扉を開けると、外は夜のように真っ暗だった。本当に昼なんだろうか?
上を見ると、あの大きな要塞が太陽をすっぽりと隠している。にしても…まだよくわかっていない事がある。あの要塞を使って、一体何が目的だ?
「ここまでこれたのは良かったけど…どうやって上に行くの?」
「…そこまで考えてなかったな。飛行タイプのポケモンがいれば…」
そんな奴…俺達の知り合いの中にいたか?う〜ん。少なくとも、旅にはいないよな。
すると、上の方から声が聞こえてくる。しかも、聞き慣れた声だった。
「ラピスにソルトじゃないか!こんなところで何してる!?」
「あ、ブレンおじさん!」
ブレンおじさん。パパさんの弟で、種族は“ピジョン”だ。しかも、“ピジョン”の中ではかなり大きい方らしい。
そうだ。おじさんなら、あそこまで皆を運んでくれるかもしれない。説得が必要だけど…。
「おじさん!俺たち、あの要塞に行かないと行けないんです!連れてってくれませんか!?」
「な!?何言ってんだ!子供が行っていい場所じゃねぇんだぞ!それで、お前らに何かあったら、兄さんに何て言ったら良いんだ…」
「それは百も承知で言ってるんです!俺達、どうしてもあそこに行かないと行けないんです!」
かなり長い沈黙の後、おじさんは口を開いた。重い口をムリむりくり開けているようにもみえる。
「…分かった。ただし、ちゃんと生きて帰ってこいよ。それが条件だ」
「おじさん!ありがとう!!」
「さ、早く行かないといけないんだろ?早く背中に乗りな!」
皆が背中に乗っても、ずいぶん余裕がある。本当に大きいんだな。
皆が乗ったのを確認すると、おじさんは翼を大きく羽ばたき、大空に舞った。
「すごーい!!空を飛ぶってこんな感じなんだ!」
マームがおじさんの背中の上でハシャギまくる。おいおいやめろよ!
「マーム、そんなに暴れたら落ちちゃうよ!」
「はーい。でも、すっごく気持ちいいーーー!!!!」
確かに、それはわかる気がする。
それでも空の旅は、あっという間に終わり、あの要塞の入り口のところにたどり着いた。さぁ、ここに来たからには、もう後には引き返せない!
おじさんの背中から降りると、なんだか不思議な感じがする。本当に空中に浮いているんだろうか?
「ありがとうおじさん!いってきます!」
「……頑張れよ!」
「はい!」
寂しく見送るおじさんの顔を他所に、俺達は未知の領域に踏み出す。とんでも無いことが起こっているのは皆が分かっている。だからこそ、俺達は帝国をとめないといけないんだ!
〜2〜
「なんだか…不思議な感じ…」
中は古い遺跡の用な感じが漂うなか、どこか近未来の用な…。不思議な感じな空間になっていた。でも、ここから何があるかは分からない。気をつけて移動しないと…。
「ねぇ、そう言えばさ。帝国の宰相さんが言ってた『あのお方』って一体誰の事なのかな?」
「あの扉の中に、封印されているって事だよね。眠るとか言ってたから」
「……ダメだな。情報が無さすぎる。目的も分からなきゃ、この要塞が一体何なのかも分かってない」
帝国の目的は一体なんなんだ…?『あのお方』?一体何者なんだ?
すると、少し開けた所に出てきた。この感じ…絶対あれだろ!
「……!なにか来るよ!」
「皆!構えろ!!!」
奥の扉から、軍人が大量に流れ込んでくる。やっぱりこういう展開になるか!
「“エナジーボール”!」
「“十万ボルト”!!」
「「「“トリプル火炎放射”!!!」」」
「“ムーンフォース”!!」
「“BKC”!!」
「「“ダブル水鉄砲”!!」」
一気に倒そうとしても、次々と流れ込んでくる。これじゃあいくらやってもきりがない!
すると見かねたのか、シュトゥルムが何か技を使おうとしている。
「皆!耳を塞いで!鼓膜が破けるよ!!」
そう言われ、皆とっさに耳を塞ぐ。シュトゥルムが何か呟くと、とてつもなく大きな音が部屋全体に響く。体がビリビリするぐらいの音量だ。耳を塞いでなかったら、あっという間に鼓膜が破けてたよ。
音が止むと、あれだけいた軍人が皆して倒れている。
「ふぅ。これで先に進めるね?さ、行こう!」
シュトゥルムはそう言うと、さっさと先に進んで行ってしまった。一体、あの技は何だったんだろうか?後で聞いてみよう。
さらに先に進むと、3つの分かれ道が続いていた。さぁ、どっちにいく?
「どれが正解かな?」
「案外、全部不正解だったりしてな」
うん…?あの声は…。真ん中から聞こえてくるあの声は…!間違いない!あいつの声だ!!!
皆を置いて、ソルトは真ん中の道を走り去ってしまう。
「ソルト!?ちょっと待って!どこに行くの!?」
ラピスが、ソルトを追いかけようとしたときに、上から何か降ってきた。
「っ!?危ない!!」
シュトゥルムが、ラピスの首を掴み、右側の道に倒れ込む。大きな槍が、上から降ってきて、皆を4匹づつに分ける。
右側の道には、ラピス、シュトゥルム、ユーリにサファイアが。左側の道には、レイン、マーム、ヒカミ、シャナと分けられた。
「ここからは、別れて進めってか」
「大丈夫です。こう言うのは大抵、最終的には皆同じ所に出てくるように設計されてるはず」
「それならば、早く行った方が良いな。ソルトの事も気になる」
「それじゃあ、また!」
それぞれ4匹づつが左と右の道を進む。これから先に待つ驚異について、そして、お恐ろしい真実が待っていることなんて、誰もが思わない事だった。
辛い過去がサファイアにあることなんて…。誰も…。