1話
〜1〜
俺たちが王都に着くと、城の前に皆が待っていた。
全員がソワソワしている…。と、言うことはあれを見たと言うことだ。そりゃそうか。あれだけでかいんだ、西州全域で見られたはずた。
「やっと帰ってきたな。見たか?あのでっけぇ要塞」
「見たもなにも、俺たちがいた遺跡があれになったんだ」
「どう言うことだい?」
「えっと…」
ラピスはみんなに、遺跡の地下にあった大きな扉と、帝国の宰相ギラン・メラニウムスのことについて話した。
みんなから返ってくる表情は、まちまちだった。驚くのと、そうでもないって顔。
「なんだそれ…!じゃあ、早く中央州に行った方がいいんじゃねぇか?」
「無理よ。ここから中央州に行くなら、寝ないでも3日は掛かるわ。それじゃあ絶対に間に合わない」
だよな…。でも、行かないといけないのも事実だ。どうする?空を飛ぶか?いや、飛行タイプはこのメンバーにはいない。じゃあ“テレポート”で…。ダメだ!それじゃあシャナに負担がかかる。そんなことはしたくない。
「他に方法は無いのかな?」
「……みんなで一気に移動出来る方法」
今回ばかりは、みんなの知識を集めてもどうしようにもならない。
するとそこに、1匹の“エルレイド”がやって来た。雰囲気からいって、執事なんだろうか?
「申し訳ございません…。ソルト・カーテリアス様でしょうか?」
「そう…ですけど…。あの…貴方は一体…?」
「申し遅れました。私、国王の執事でございます。リチャード・スレムと申します」
リチャードさんは、国王の執事なのか…。でも、そんなポケモンがどうして俺の所に…?
「その…すみません。盗み聞きしてしまいまして…。中央州に行かれるのですよね?」
「そうなんですけど…。どうしようにも無くて…」
「…それなんですが。私について来ていただけますか?」
そう言うと、リチャードさんは振り返り、スタスタと歩いていく。
とにかく…追いかけるか。
前をスタスタと歩くリチャードを追いかけると、城の中にはいる。城の中は、床は大理石で出来ていて、天井にはステンドグラスがいくつもついている。明らかに高そうだ…。
そして、ひとつの扉を開けると、地下に降りる階段が続いている。リチャードさんは、そこを降りていく。
「ねぇ、どこに行くのかな?」
「さぁ?どこかに続いてるのは確かだろ」
地下の一番下に着いたのか、階段は終わった。
そして、何もない空間がぽつんとあるだけ…。いや、床に魔方陣ようなものが書かれている。これは…なんだろう?
「ここは、転送の間。その昔、まだ障壁がなかった頃に使われていた部屋です」
「何に使われていたんですか?」
「なんでも、中央州と交流が盛んだった頃に移動用として使われていた、テレポート用のものだそうです」
て事は…!これを使えば一瞬で中央州に移動出来るって事だな!でも…どうやって使うんだ?
「皆様、そこの魔方陣の上にお乗りください」
リチャードさんに言われるがまま、魔方陣の上に乗る。皆でギリギリって所だな。うまくいけばいいけど…。
すると、リチャードさんは何か呟く。
「万事の神よ。今我に力を与えたまえ。すべての地にいくことの出来る力、今、ここに見参せよ!」
すると、魔方陣は蒼白い光を放つ。そして、一瞬にしてソルト達は姿を消したのだった。リチャードは、一人こんなことを呟く。
「その昔、この地に厄災が舞い降りるとき、偉大なる神は我々に力を与え、すべての回避を我々に託した。…しかし、今回はそうもいかないかもしれません」
そして、地上に出るための階段を登る。
「あの方々に、幸運を──」
そう呟き、誰もいない地下の扉を閉め、鍵をかけた。