3話
〜1〜
それからしばらくして、かなりの大金を貰った。もちろんそれは、しらたまを無事に守ることが出来たからだ。ちなみ、その値段は1.000.000ポケ。俺がバトル祭りで勝ち取った優勝賞金と同じ額だ。
「で?これからどうする?」
「そう…だな。帝国が来ないことには何も始まらないし…しばらく滞在するか」
「そもそも、なんで帝国は西州と対談なんてしようと思ったのかな?そこが気になるよね?」
シュトゥルムが言ってることは俺も気になっていた。仲が悪いことで有名な2つが、なんでこんな時に…?それに、しらたまを盗もうとしたのは帝国の奴だ。西州が警戒するような事をなんでする?
「宰相さんってどんなポケモンなのかな?」
「さぁ?知ってるのは上層部の奴等だけだからな。俺は知らねぇよ」
「レーさんも知らないの?」
「上層部は、将クラスからだからな。私も知らないのだ」
って事は…カルスは知ってるって事か…。あーっ、思い出したくない奴の顔を思い出したー。
「そう言えば…私。宰相の声聞いたことあるよ?」
「それはどこでなの?」
「西州の森の中だったかな。すっごく冷たくて…まるで氷みたいな声だった」
「……とりあえず、どんな奴だったとしても、警戒しておいた方がいいな」
俺がそう言うと、他のみんなも頷いた。
そう、出きるだけ警戒しておこう。帝国がしてくることはどれもメチャクチャな事ばっかりだ。
もう…あんな悲劇は起こしたくない!
「あのね、この王都を出てすぐの所に遺跡があるんだよね。私…行きたいなぁ〜。ねぇソル君、ダメ?」
「なんでそうなった!?帝国を待つって言ったろ!」
「だって、行きたいんだもん!私、キラキラした宝石とかだーいすきだから!」
お宝好きかよ!そして、マームがついに駄々をこね始めた。
子供じゃねぇんだから、それぐらい我慢しろ!と言おうとした所に、サファイアが1つの案を出してきた。
「それじゃあ、遺跡に行くのと、ここに残るのとで分けたらいいんじゃない?」
「サーファンやっさし〜!どこかの誰かさんとは違って!」
「はぁ〜。分かった分かった!じゃあ、俺とラピスと、マームにヒカミで行こう!」
「ありがとー!!じゃあさっさと行こう?ここからだったら走って3分だよ?」
いや、それはお前のスピードだから!俺たちのスピードと違うだろ!
「ソルト…追いかけなくていいの…?」
え?ってもういない!!
マームは先に1匹で走り去ってしまった。道案内ぐらいしろよ!全く…。
残りの5匹に、後は頼んだと言い残してマームを追いかける。ここに来てからずっと走ったりしてばっかりだな…。
カンカンに照りつける太陽の下、古代の遺跡に足を向ける。
〜2〜
ここは、王都から出て約6分位走った所にある遺跡…。
その昔、“アルセウス”と言うポケモンがここに封印されたらしい。本当かどうかは知らないが、この世界を創ったのがその“アルセウス”らしい。
“アルセウス”はまず、“パルキア”、“ディアルガ”、“ギラティナ”と言うポケモンを作り出し、空間、時間、反転世界を創らせた。
空間と時間でこの世界が出来、反転世界がこの世界を支えている。そして、生命が生まれた。
その生命には、知識、感情、意志の3つを与え、それぞれを司るポケモンが生まれた。そして…今がある。と言うことだ。
これを知ったのは、それから大分たってからのこと…。それまでは全く気にしてなんかいなかった。
「さーてさてさて、さっさと済ませて帰ろう」
「うん!さぁお宝ちゃーん!さっさと出てきなさぁい!!」
「それじゃあ絶対出てこないよ!!」
「……」
俺たちは、遺跡の中を散策し始める。
遺跡の壁にはポケモンの絵が描かれていた。かなり古いものだ…。何時の物なんだろう?まぁ、俺たちが生まれる前なのは分かるけどな。
「ねぇ見てみてー!」
「いや、それ骨だから。お前犬じゃねぇだろ!」
「おっかしぃなぁ。お宝の気配はビンビン伝わってくるのに〜」
「気配とか分かるの…?」
全く…何やってんだよ。こんなんじゃ日が暮れちまうわ。
すると、マームが遺跡の床石をバンバンと蹴り始めた。見つからなくてイライラしているのか…。あるいはただの好奇心か…。
「やめろよマーム。ただでさえボロなのに…蹴って抜けたらどうすんだ」
「それを期待してるの」
「へ?」
すると、マームの思惑通りに床が綺麗に抜けた。って!落っこちてるーーー!!!!
「バカやろーーーー!!!!」
「ひゃっふーーーー!!!!!」
その声が遺跡中に響き渡ったところで、地面に着いた。
もちろん、瓦礫の上に…だけど。かなり痛い。特にお尻が…どうやら尻餅をついてしまったみたいだ。
「おい、みんな大丈夫か?」
「…うん。大丈夫だよ?」
「あーっ、楽しかったー!!」
「………」
「って!ラッピンが無事じゃない!!」
何故かは知らないが、ラピスの喉に骨の形をしたものがあった。落ちた衝撃で喉つまりを起こしてしまったらしい。って!大変だ!!!
「何やってだよ!それが食い物じゃ無いことぐらい分かるだろうが!」
「あが、あがが…」
ラピスの喉に手を突っ込んで骨を取り出そうとする。中々取れないな…。相当奥にあるらしい。どうせならそのまま飲み込め!…とは言わねぇよ。俺だってそこまで非道じゃない。
ラピスの喉に手を突っ込みながら、マームに質問をする。
「ここって、遺跡の地下か?」
「だね。かなり深い所に落っこっちゃったみたいだし」
「……奥に続いてるみたい」
「あ、取れた!」
「ありがとうございます神様!!」
ラピスの骨もなんとか取れた所で、遺跡の地下のさらに奥を目指す。この時のマームの顔つきががらりと変わり、真剣な顔つきになったのはビックリだった。
ここから先は、光が全く入って来ない。さっきの骨に草を巻き付けて、火をつけて松明がわりにした。
「何処まで続くのかな?」
「さぁ?何処までもだろうし、もうすぐだろうし…進むしかねぇだろ」
「まぁ、そうなんだけとさ…」
「……?」
ヒカミがいきなり止まり、俺達も止まった。どうしたんだ?
「どうたのヒカミン?」
「……すこしだけど、風を感じる。この先に広い空間があるかも」
「よし、じゃあ進もう」
真っ直ぐな道が続き、罠とかがあるわけでもなく普通に通り抜ける。しばらくしてから階段が見えてきた。
螺旋階段みたいになっている階段を下へと下っていく。そして、明らかにいままでとは違う空間にたどり着いた。
「広い空間…みたいだね。あ、燭台みたいのがあるよ?」
「つけてみるか」
2つの燭台に火を灯すと、次々と火が灯り始め、空間全体が明るくなった。
そして、俺たちの目の前に現れたのは…巨大な扉だった。
「おっきぃ!!なんなのこの扉?」
「何か…封印されてる?いや、巨大な金庫?ぶつぶつ…」
「ねぇ、これ、どうやって開けるのかな?」
ジーっと見つめているマームは、ぶつぶつと呪文みたいに独り言を呟いていた。
そして、ヒカミが何かの装置を発見する。
「…これじゃない?」
「なにこれ…?窪みみたいのが3つあるよ?」
ますます分からなくなってきた…。ここに
嵌めるようなものは無いし…。
俺たちが考えに苦しんでいる間、黒い影が後ろからうごめていた…。