1話
〜1〜
「ふぃ〜!!良いお天気だね!」
次の日の朝、ラピスは何時もと変わらず普通に元気だった。まるで、昨日の涙が嘘のように感じる…。いや、そう感じさせてるだけなのか。
「ラピス…。もう大丈夫なの?」
「うん!もうバリンバリの絶好調だよ!」
「本当に大丈夫か?ムリだけはするんだねぇぞ?」
「ありがとうユーリ。でも、大丈夫だよ?」
そう言って、ラピスはクルクルと回り始めた。
って、そんなに回ったらみんなの迷惑になっちまうだろうが!
「ラピス!みんなの迷惑になるからやめろって!」
「キャッ!」
「うわぁ!!」
俺の忠告も虚しく、1匹の“ツタージャ”とぶつかってしまった。だからやめとけって言ったのに…。全くもう。
「ご、ごめんなさい!あの、大丈夫でしたか?」
「大丈夫大丈夫!割れるような物は持ってなかったし、私そう言うトラブル慣れっこだから」
そう言って、剣とボーリングのピンを拾う。なんで、そんなもの持ってるんだ?て言うか、“ツタージャ”にしては珍しい性格って言うか…。
「て言うか、君の方が大丈夫だった!?この剣本物だから、切れたりとかしてない?」
「なんとか尻餅ついただけですみました…。あの、その剣ってどうするんですか?」
「うん?あぁ、こう使うんだよ」
そう言って、3本の剣をお手玉のように回し始めた。“蔓の鞭”を上手く使いこなしている。
手先が器用なんだな…。
「ほいっ!まぁ、こんな感じ」
「すっごーーーい!!!もしかして、大道芸人ですか!?」
「お、よく知ってるね。そう。私、旅する大道芸人のマーム。マーム・ペインテッド。よっろしっくねぇ〜!」
そう言って、マームは可憐にポーズを決めた。
本当に珍しい性格を持った“ツタージャ”だな…。俺が知ってるのは、クールなイメージが強いんだけど。こう言うのもいるのか…。
「私、ラピスです!」
「ユーリだ」
「サファイアです」
「シュトゥルムです。以後お見知りおきを」
「私はレインです」
あれ?何か自己紹介が始まってる!?マームはこっちをじっと見つめて、しっかりと待っていた。
「あ…ソルト…です」
「うんじゃあ、ソル君に、ラッピン、ユリユリ、サーファン、シュートゥ、レーさんだね。よろしく!」
「ゆ、ユリユリ…」
「一気にあだ名つけるなんて、中々良い感性を持った子だね」
普通にあだ名をつけて、そう呼び始めるマームに、俺たちはついていけてなかった。それもそうだろ、初対面なのにこんなにフレンドリーにされたのは、シュトゥルム以来だ。
にしても…ずいぶんとキャラが濃いのが出てきたな!?
「で、みんなは何処にいく予定なの?」
「これから王都に行こうって思ってて…。仲間を待ってるところなの」
「王都?なに言っての?王都はここだよ?」
へ?とみんなの口から出てきた。
ここが…王都?どう言うことだ?そこをサファイアがツッコム。
「どう言うこと…?」
「だから、ここが西州の王都なの。私なんて、さっき着いたばっかりなんだから。ほら、あれがお城」
東側の方に、大きなお城がそびえ立っていた。昨日は夜だったし、急いでたから全く気づかなかった…。にしても、ずいぶんと近いところにあるんだな。
「バリボリバリボリ」
「そっかぁ。((バリボリ。もうついてたんだね((ボリボリ」
「って誰だよ!バリボリバリボリうるせぇな!!」
「あら。ごめんなさい…。私、朝が苦手で…」
「うわぁぁ!!」
サファイアの後ろには、茶色の瓶を抱えたシャナと、ヒカミがいた。いつの間に…。
「び、ビックリしたぁ!!」
「ごめん…」
「あ!もしかして、シャナとヒカミ?私ラピス!よろしくね?」
「あなたがラピスさん。私はシャナ・スプラウトです」
「ヒカミ・キトックス…。よろしく」
「よろしく!で、シャナが持ってるのって…カフェイン錠?」
「うん…。私、朝型じゃないから…」
そう言うと、シャナはまたしてもカフェイン錠を大量に食べ始めた。…またしても金がかかるようなのが仲間になったな…。
「で、そちらは?」
「あ!私、旅する大道芸人マームだよ?よろしく、シャナねぇさん!ヒカミン!」
「「………」」
「元からこう言う奴だ…」
シャナとヒカミにもあだ名をつけて、勝手にそう呼び始める。
で…王都に着いたのは良いけど…これからどうしたらいいんだろうか?
「なんでみんなは旅をしてるの?」
「えっと…実は…かくかくしかじかで…」
サファイアが、理由を説明する。かくかくしかじかは気にするな…。もし気になったら、だ作者に聞け。
「へぇー!じゃあシャナねぇさんとヒカミン以外は、東州と中央州から来たんだ!良いなぁ。私も行きたい!」
「ま、まじか…」
「だって、みんなに付いていけば色んな所に行けるんでしょ?私、西州は全部回っちゃったから、違うところ行きたかったんだよね〜!」
「どうするんだい?リーダー?」
「じゃあ、マームも今日から仲間だ!」
「さっすがソル君!よくわかってるぅ〜!!ありがとね!」
まぁ、こうして元気の良い仲間、マームが入った…。ラピスと良いコンビが組めそう…。元気ものでやってけるわ。
初の女子メンバーだからなのか、ラピスのテンションはいつも以上に高かった。これで、男子5匹。女子4匹のチームが完成したのだ。
と、それは良いけど…これからどうしようかな?
「それで?これからどうするつもりなんだい?」
「そう…だな。来てみたは良いけど、どうするかは決めてなかったな」
「じゃあじゃあ!私が王都を案内するよ!」
「しばらくそうするか…。帝国が来ないと意味がないしな」
「よーし!そうと決まれば行ってみよ〜!」
マームがそう言って、いきなり走り始めた。まるで、ラピスがもう1匹増えたんじゃないかってぐらいの元気の良さ…。俺たちは暴走しかけてるマームを追いかけるために、急いで走った。
〜2〜
それから、マームの案内で色んな所を回った。
にしても本当に色んな所を知ってんだな。旅するって言うのは、だてじゃないってことか…。
「あーっ!楽しかったー!マーム本当に色んな所を知ってるんだね!」
「西州の事は私に任せなさい!あ、そうそう!この西州には伝説のポケモン、“パルキア”が眠ってるって知ってる?」
伝説のポケモン…?そう言えば、あの障壁を建てたのは伝説のポケモンだって噂があったな。それと関係してるのか?
「ぱるきあ?」
「そう。この西州の地面の下に自分の空間を作って、眠ってるらしいよ!その証拠に、“パルキア”の力を強化する道具、しらたまがこの王国のお城の地下に保管されてるんだって!あぁ〜!1度で良いから見てみたい!」
確か…“パルキア”は空間を司るポケモンだったな。時間を司るポケモン、“ディアルガ”と対になってるとか…。中央州には、その“ディアルガ”が奉られてるんだっけ?
「“パルキア”かぁ。本当にいたら拝めてみたいなぁ」
「実は実は!今日は王国祭の日なの!だから、特別にしらたまが見れるんだよねぇ!」
「盗まれないと良いけどな」
「ソル君!それは無いよ!王国の警備はピカ一なんだから、猫1匹入れっこないって!」
もしかして…帝国の狙いは、そのしらたま?いや、それは気にしすぎか…。帝国がしらたまを盗んだところで、何も利益は出てこないしな。
「そのしらたまが見れるのって何時なの?」
「今日のお昼ちょっきし!」
「私見に行きたい!」
「あたしも興味がある…」
「じゃあ行こうよ!ほらほら!急いで急いで!」
またしてもマームが突っ走る。あんなにスピードを出して転んだりしないんだろうか?って、追いかけないと!
「全く、年寄りに運動は禁物なんだけどな」
「まだ20代前半でしょう!ほらほら、頑張ってください!」
レインが重い腰を上げて、走り始める。
光り輝く夢見る王国に、黒い影が迫っているとこは…この時は知るよしもなかった…。