3話
〜1〜
「……ラピス」
俺は、ベットで寝てるラピスをじっと見つめていた。
あのあと、ラピスが死んだ“チャーレム”と一緒に倒れているのを見つけ、急いで森の中を出た。
森を抜けて町に到着したのは、もう夜になった頃だった。宿の一室のベットにラピスを寝かせ、それからずっと看病し続けた。あの時、ラピスがしてくれたように。
すると、ラピスが目を覚ました。
「……うん?ソルト…?」
「ラピス!どうだ?気分は悪くないか?」
「大丈夫………。ねぇ…。ソルト」
「なんだ?」
「私…ソルトの事分かってなかった。分かってるつもりだったけど、やっぱり分かってなかったよ」
なんの事だ?寝たまんまのラピスの顔を見ると、かなり真剣な顔をしている。ここは何も言わないでおこう。
「私、ソルトの辛い気持ち。全部じゃないけど、分かってるつもりだった。でも、誰かが目の前で死ぬのって…こんなに辛いなんて…。思ってなかったよ」
その目には涙が溜まり、目からこぼれ落ちた。
確かに辛かった。でも、俺の辛さはこの後どうしたら良いのか分かっていたからこそ、辛さが軽減されていた。でも、身内を無くしてどうしょうもない不安は、辛い何てものじゃない。まるで地獄みたいだった。
「俺は…。お前のお陰で立ち直れたんだ。お前が俺に優しくしてくれたから…俺はここにいれる。だから、今度は俺がお前を守る。もう二度と、こんな思いはさせないから」
「…うん。ありがとう」
「ほら、まだ寝てろよ。明日は、王都に行こうと思ってんだからさ。俺はもう寝るけど…一人で大丈夫か?」
「もう!子供じゃないんだから、一人で寝れるよ!」
「ラピスはやっぱりそうでないとな。じゃあおやすみ」
「おやすみ」
ラピスの部屋から出ると、サファイアがユーリの部屋から出てきた。そう言えば、何か話があるとか二人で話してたな。
「ラピス起きたの?」
「あぁ。もう寝るのか?」
「うん。明日は、王都に行くんだよね?なら寝て身体を休めないと」
「そうだな。ま、寝る子は育つって言うし、明日も期待してるよ」
「任せておいて!それじゃあおやすみ!」
元気にそう言って、サファイアは自室に走って戻った。俺の部屋は、ユーリの部屋の隣にある。今回は、暗殺とか無いといいんだけどな。
自室のベットにダイブして、疲れきった身体を休めるために、すぐに寝息をたてた。
そこを、隣の家の屋根の上で見ているポケモンが2匹。どうやら、今回も暗殺があるみたいだ。1匹は“アチャモ”、もう1匹は“サーナイト”と言うポケモンがだった。
“アチャモ”が“サーナイト”に質問をする。
「ねぇシャナ。どうして、この仕事を続けるの?」
「珍しいわねヒカミ。あなたがそんな質問するなんて」
「何となく気になって……どうしてなの?」
「そうね…。私にはこの仕事しか出来ないから…かな。この仕事なら、命をかけられるの。そう言うヒカミこそ、なんで私と一緒にいるの?」
ヒカミと言う“アチャモ”は、う〜ん。と声を唸らせる。それでもかなり早く答えが返ってくる。
「シャナといたら…私の記憶も何か分かるかなって。それに、楽しいし」
「私の方がまともじゃない。さ、仕事よ?位置について?」
「分かった」
ヒカミが屋根の下に移動すると、シャナは自前のライフルを準備する。遠距離を得意としたシャナのついた二つ名は、千里眼の天使だった。その命中率は、百発的中。狙った獲物は絶体に逃さない。
シャナはトランシーバーで、ヒカミに連絡を取る。
「ヒカミ、準備は良い?」
「うん。いいよ」
「それじゃあ、作戦スタート!」
ヒカミは近距離を得意なタイプ。シャナの良い相棒と言ったところだ。ヒカミが追いこんで、シャナが仕留める。それがこの二人のやりかただった。今回もそのやり方でやる予定だ。
ヒカミはソルトの部屋に入り、ベットに近づく。でも、ソルトだって黙って殺される訳にはいかない。ヒカミが自分の部屋に近づいている時に、すでに気がついていた。窓の方にシーツをバサッ!とやり、ヒカミに攻撃をする。
「“水鉄砲”!!」
「っ!“火の粉”!!」
“水鉄砲”と“火の粉”で出来た水蒸気が、部屋で一杯になる。真っ白になってしまえば、こっちのもんだ!
自室を抜けだし、どたばたと廊下を走るとレインが部屋から出てきた。
「どうした!?」
「暗殺だ!今部屋に1匹いる!」
俺が外に出ようとしたときに、レインが腕を引っ張って止める。
「外にもう1匹いるっていう可能性は否定できない!」
「じゃあ、中にいる方を何とかするってか?」
そこに、あの“アチャモ”が廊下を走ってこっちに向かってくる。
「“火炎放射”!!」
「“火炎放射”!!」
2匹の炎タイプの“火炎放射”が互いにぶつかる。お互いがお互いで引くに引けなくなっていた。
それでも、上なのはレインの方だった。徐々に押していき、そのまま押しきったそして、“アチャモ”の顔をレインが覗く。
「君は…!ヒカミか?」
「……!?師匠?」
なんだ?もしかして…知り合い?そこに、サファイアとユーリ、シュトゥルムが起きてきた。
「なんで君がここに?」
「………」
ヒカミは、レインのその質問には答えず、トランシーバーで誰かに連絡を取った。
「シャナ、ごめん。今回の依頼、取り消したいんだけど…良いかな?」
「ヒカミがそう言うなら…私は良いわよ?今そっちに行くから」
「うん。待ってる」
レインは、ヒカミの顔をじっと見つめていた。
ヒカミの顔はさほど変わらないが、すこしだけ安心したような顔つきになった気がする。
「どうやら訳ありみたいだね。ここじゃなんだし、ロビーに行こうよ。ラピスが起きちゃうしね」
シュトゥルムがそう言って、先にロビーに移動する。やはり、大人の対応ってやつだな。そう言うところだけは、尊敬している。
レインとヒカミと一緒に階段を降りて、ロビーに移動する。真実は、もう、すぐそばにあった。
〜2〜
しばらくすると、ライフルを持った“サーナイト”が現れた。やっぱり、仲間がいたのか…。あのまま外に出てたら、確実に撃たれてたよ。
「初めまして、私はシャナ・スプラウトと言います。彼女はヒカミ・キトックス。まぁ、分かってると思いますが、暗殺の仕事をしています」
「俺は、ソルト・カーテリアスです」
「ユーリだ」
「サファイアです」
「シュトゥルムと言います。以後、お見知りおきを」
「私は…「レインさん…ですよね?」!?」
シャナがレインの自己紹介を遮った。ちょっとショックだったり…って、違う違う!!
「ヒカミからうかがっています。お師匠様だとか…?」
「師匠だったんだ」
「まぁ、な。でも、まさかこんなところで再開できるなんて…思ってなかった」
知らない間に弟子なんか取ってたんだな。見たところサファイアより年下みたいだけど…。いつ取ったんだろう?
「もう…5年なるか」
「うん。でも、2年で出てったけどね」
「そっか、レインにとって可愛い弟子ってことだね。じゃあどうだろう?僕達と一緒に旅をしないかい?」
「え?」
二人から返ってきた反応は、だとうだった。って、勝手になにやってんだよシュトゥルム!
「どうかな?」
「……あたし。自分の記憶が無いの。だから、シャナと一緒に仕事をしながら探してたんだけど、もし許されるなら…一緒に行きたいな」
「私も、普通に仕事をするよりも楽しそうだから、一緒に行っても良いでしょうか?」
「って、言ってるけど?どうする、リーダー?」
全く…勝手に誘ってんじゃねぇよ。俺が断れないのを知ってるくせに…さ。まぁ、俺の答えはいつも変わらない。
「もちろん。一緒に行こう!」
「ありがとう…」
「ありがとうございます。それじゃあ、これからよろしくお願いしますね?」
まぁ、今回はこれで終了した。
二人をラピスに紹介するのはまた明日の話…。