9話
〜1〜
俺とラピスは、メラニウスの町の中を歩き回っていた。
1.000.000ポケもあるんだ。これでしばらくは安定した生活が送れそうだ。
ついでに、俺がいきたい場所にもよることにした。
「ここって…宝石店?」
「そう。ここは東州一の宝石店なんだ。ラピス、外で待っててくれないか?」
ラピスにそう言い残して、宝石店に入る。
宝石店には、“ヤミカラス”と言うポケモンと“ルージュラ”と言うポケモンが接客をしていた。
「いらっしゃいませ〜。この度は何をお探しですか?」
「予約していたソルト・カーティアスです」
「はい〜。ご予約はうけたわっております。こちらへどうぞ」
店の奥には簡易のイスと机があり、イスに座った。
すると“ルージュラ”があるものを持ってくる。これが俺の目的の物だ。
「はい、こちらがご予約の品にございます。加工、細工込みで、お支払として100.000ポケでございます」
100.000ポケを支払って、店の外に出る。やっぱりこう言うきらびやかなところは、どうも落ち着かない。
ラピスが店の横の方のベンチに座って待っていた。
「何してたの?」
「うん?あぁ、これを取りに来たんだよ」
そういって、ラピスに見せたのは、この前のバトル祭りでの景品のラピスラズリとオパールをあしらったペンダントだった。
真ん中には大きなラピスラズリが輝いている。
「うわぁ。高そう…」
「ほら、俺さ。去年の誕生日プレゼント渡せてなかったから…。やるよ」
「良いの!?ありがとう!!」
「いいか?絶対無くすなよ。俺が頑張って勝ち取ったものなんだからさ」
「うん!」
そう言って、ラピスは早速ペンダントを身につける。
丁度胸のところに来る感じで、キラキラと輝きを放っていた。もうそろそろで12:00だな。戻るか。
「そろそろ戻るか」
「そうだね。帰ろう」
もと来た道をせっせと歩く。
ちょっとした幸せを味わうぐらい、俺にだって権利はあるよな?
〜2〜
「で、なんであんたがここにいるんだ!!!!」
「あ、シュトゥルムさん。ユーリ達も会ったんだ」
さっきのナルシスト男が、風景画を書きながらこちらにウインクしてきた。
「これも運命ってやつだね」
「何が運命だ!あんた、俺の後を追っかけてたろ!」
「なんのことかな?僕は君達を運命的に見つけて、今ここにいる。それだけだよ?」
あーーっ!!!もう嫌だ!!こっちの調子が本当にくるっちまう!!!
こう言うナルシストな奴が、一番嫌いなんだ!
「ラピス、そのペンダントどうしたの?」
「えへへ。ソルトにプレゼントしてもらっちゃった」
「ふぅ〜ん。お前もすみにおけないなぁ〜」
ユーリが腕で突っついてくる。こっちはそれどころじゃねぇっての。さっさとこの場から消え去りたい。
「レインさん。宿はどうなったんですか?」
「あぁ、それがな。シュトゥルムが安くて良い宿を紹介してかれてな。シュトゥルムもそこに泊まっているらしいぞ?」
な、なんだと!?これ以上いたくないのに、まだつきまとうのか!?あぁ、俺の精神がどんどんダメージをおっていく…。
「見つけたぞ、シュトゥルム!今日こそ捕まえてやる!!」
「おおっと、見つかってしまったか、逃げるぞーーー!!!」
そう言って、シュトゥルムは走る。ついでに俺達もメラニウスの町中を走る。なんで!?
まぁ、ここで捕まったら死ぬのがきっとオチだろうから走るけど!憲兵が、狙ってるのってシュトゥルムなんじゃ?
「なんで俺たちまで走ってんだ!?」
「それは僕が入るからだろうねぇ」
「あんた何したんだよ!」
「う〜ん、ちょっとね。捕まって牢屋に入れられたんだけど、脱獄したんだぁ」
それって脱獄犯じゃねぇか!!
こんなところで捕まるぐらいなら、こんなところになんか来てねぇよ!!
「“水鉄砲”!!!」
憲兵に向かって“水鉄砲”を打つ。
あぁ、ついに憲兵にまで手を出すはめになるなんて…。
「こんなときになんなんだけど、僕を君たちの仲間に加えてくれないかな?君たちからは良いインスピレーションを感じるんだ!今日から君達を僕の記憶として刻ませて貰えないかな?」
「そんなのだ「全然OKですよ!」勝手に承諾するなぁ!!!」
「それは良かった!それじゃあ、これからよろしくね?」
なんか知らない間に、これからも一緒にいるはめになるなんて…。ちょっとの幸せから返ってきた不幸が大きすぎる!!
シュトゥルムの案内で、泊まることになっていた宿に辿り着く。知らない間に憲兵も撒けたし、何だかんだで大変だった。
「それで、君達はどうして旅をしているんだい?」
「あ、そう言えば、ソルトのやりたいことってなんなの?」
サファイアが、不意にそんな質問をしてきた。
もうそろそろ良い頃合いなのかもしれない。ラピスの顔を見て、話すことを決めた。
「実は…俺」
自分の村のこと、俺自身が掲げている目標のこと、全てを打ち明けた。そこで、一番反応したのはユーリだった。かなり怒っている。
「帝国は…!そんな卑劣な事をやっていたのか!?クソ!市民を守るのが軍の役目だろ!!その軍が、市民を傷つけるなんて…!それじゃあ、やってることが真逆じゃねぇか!!」
「ゆ、ユーリがプッツンした!」
「ユーリ!一回落ち着け!お前らしく無いぞ!」
「……!俺、先に部屋に戻ってる」
あんなユーリ、初めて見た。
正義を大切にするがあまり、逆上してしまう。それは、滅多に怒らない事の反動なのかもしれない。そんなユーリを見つめながら、俺は不意にそう考えてしまう。
ラピスにあげたペンダントが、眩しいぐらいに輝いていた。