8話
〜1〜
「さぁて!!諸君!ついたぞ。ここが東の華の都!メラニウスだ!」
夜遅く走り続けて、とうとう朝になってしまった。
そんな時に目の前に現れた街こそが、俺達が目指していた首都。メラニウスだった。
え?なんか一気に飛んでないかって?…そこは作者に言ってくれ。
「華の都!?スッゴーい!!」
「さて、どうやって入ろうか…」
ヒョコ!と顔を出すものの、門番らしきポケモンはどこにも見当たらなかった。と言うか、町の中が少しガヤガヤしてる?
「なんかあったのかな?」
「なんでもいいさ。とにかく大チャンスだ!入るぞ」
普通に入っても何ごともなく。なんだか変な感じがした。キレイに整備された石畳に、まわりにはお店が連なる。木の実やハーブ。タネに玉。ワザマシインの専門店までもがある。
「しばらく別行動しよう、12:00になったらまたここで集合しないか?」
「私、ショッピングしたい!ね?ソルト、一緒にいこ?」
「仕方ねぇな。俺もよりたいところがあるし、いいぜ?皆はどうすんだ?」
「俺は、食料調達だな。仲間が増えるし、しかもそいつが大食いだからもう品切だ」
「僕はユーリと一緒に、日用品を買いに行こうと思ってるよ?」
「私は宿を取りに行く。それじゃあ、12:00に」
ここで、みんなと別れてラピスとショッピングをすることにした。
それにしても、なんか視線を感じるのは俺だけか?
「うわぁ!可愛い!あ!あれも綺麗!いいなぁ〜。ねぇ、ソルト。ソルト?」
「……」
「どうかしたの?」
「なんかつけられてる気がする」
「気のせいじゃない?あ…」
気のせいじゃない気がする…。俺に姿をさらさないなんて、一体誰なんだ?って、ラピス?
ラピスは、1匹の“ドーブル”の前に立っていた。絵描きか何かか?
「綺麗な絵…」
「お嬢さん。僕の書く記憶が好きなのかい?」
「記憶…?」
「そう。これは、僕の記憶なんだ。記憶は絵として書き留めておけば、みんなが見ることが出きるだろ?そこで、色んな事を感じて欲しいんだ。あ、僕はシュトゥルム・ラヴェイツ。放浪の絵描きさ。それよりどうだろう、君を僕の記憶として書きたいんだ。いかがかな?」
「え?いいんですか!?っえ!?」
危ない危ない!ラピスが変なナルシストやろうに、お金を騙し取られるところだった!
ラピスの腕を引っ張って、急いで逃げ出す。しばらく走って、見えなくなったところで、ラピスの方を振り向く。
「お前なにやってんだよ!ああいうのは大抵、絵を高値で売り付けるような奴らなんだ!簡単に心を動かされるなって!」
「でも、あの絵描きさん。悪いポケモンじゃ無さそうだったけど」
ダメだこいつ!すぐ目を離すと直ぐにこうなる!怪しいって気持ちが無いのか!?興味だけで動くとろくなことがない。
「怪しめよ!知らないポケモンに付いてっちゃだめだって、ママさんに言われたろ!」
「それもそうだけど…。あの絵、スッゴく綺麗だったなぁ」
「全く、ナルシストな奴は俺の嫌いなタイプだ…」
「酷いなぁ。そりゃないよ」
横を見ると、あの変なナルシスト野郎がいた。
こいつ!亡霊かなにかか!?てかなんでついてくんだよ!!!
「あ、あんたなんでついてくんだよ!!!」
「あんたは無いでしょ。僕にはシュトゥルム・ラヴェイツって名前があるんだからさ」
「じゃあ、シュトゥルムさん!なんで俺たちの後をついてくるんですか!」
「君たちを僕の記憶として書き残したいと思ってね。ほら、僕って運命を敏感に感じ取る男だから」
知らねぇよそんなの!!
またラピスの腕を引っ張って、俺が行きたかった場所に急ぐ。その後ろにはシュトゥルムがしっかりとついてきていた。俺の怒りが最頂点に達する前にさっさと消えて欲しい!
俺がそう願ったからなのかは分からないが、シュトゥルムはどこかに消えてしまってきた。一体なんだったんだ…。もしかして本当に亡霊!?
「ソルト、う、腕!」
「あ、痛かったか?ごめんな。なんか、調子狂っちまって」
「ううん。大丈夫だよ。それより、ソルトが行きたかった場所ってどこなの?」
「あぁ。それじゃあこれから行くか」
「うん!!」
俺とラピスが一緒に歩って行くなか、シュトゥルムはしっかりと後をついてきていた。
「うん。やっぱり僕は、運命を敏感に感じ取る男のようだ」
そう呟きながら、人混みのなかに紛れ込んで行った。